缶ヶ江メグルは進撃の巨人が好き

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壁の向こう側に行く

22巻あらすじ グリシャの任務/調査兵団、海に辿り着く

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第87話 境界線

グリシャは治安当局の職員から拷問を受ける。裸で、椅子に体と四肢をベルトで固定され、「知らない」と言えば指を一本ずつ切り落とされる…。グリシャが知っていることを全て話したところによると、復権派の計画は、始祖の巨人の力を引き合いに東のマーレ敵対国に支援と亡命を呼びかける所まで進んでいたらしい。そしてフクロウの正体はグリシャも知らず、治安当局もわからないままであった。蒸気船で楽園に行く時間となり、グリシャ達はパラディ島 楽園の入り口、30mの高さの人口絶壁の上に連れて行かれる。

 

ここでグリシャ達は国家反逆罪により終身刑となり、これから知性の無い「無垢の巨人」にさせられる。人を感知し、人を追跡し、人を食らう。ただそれだけを死ぬまで繰り返し、そして死ぬ術がほとんど無い。

グリシャは刑を執行するリーダー的な職員2人をどこかで見たことがある…。

 

「さぁ今回は数が多いぞ!!どんどんやっていこう!!」

小太りの職員がそう言うと、復権派の仲間たちは次々と注射を打たれ、壁から突き落とされる。そして巨人化し、一番最初に人のまま突き落とされたエサ、グライスを感知して走ってゆく。

 

次に連れて来られたメンバーの中に一人の女性がいた。ダイナだった。なぜ…ここに?

俺は洗いざらい話したはずだ。彼女は王家の血を引いているエルディア人だから、マーレにとっても始祖の巨人の力を操るのに必要なはず…。誰かが揉み消したのか!?

 

「グリシャ…私は…どんな姿になっても…あなたを探し出すから」ダイナは注射を打たれ、壁の下に突き落とされる。

「ダイナアアアアアアアアアアアア!!」

 

小太りの職員「ハハハハハ。見ろ、お前には目もくれずグライス君を追ってるぞ。本当はあっちの男に気があったようだな」

「黙れ」グリシャは2人の職員のことを思い出していた。

「お前だろ、15年前…俺の妹を犬に食わせたのは…8歳の妹を犬に食わせたのは!!お前だろ!!」

 

小太りの職員はチッと舌打ちし、残り一人の受刑者を引き受け、職員を自分ともう一人のリーダー格の2人以外船に戻らせる。船に戻る職員たちの中で、事情を知らない者が尋ねる。

「どういうことですか?」

「ここからは曹長の趣味の時間だ、新入り。まぁあまり触れてやるな。…しかしエルディア人とはいえ8歳の娘にまで手が及んでいたとはな……」

 

 

 

「思い出したよ少年。お前は巨人にしないでやる。彼(残り一人の受刑者)に食べてもらうことにした。3~4mくらいの巨人に調整するから、こいつと戦ってくれ。それもできるだけ長く抵抗してくれると助かる」

「あんたは何で…こんなことするんだ?」

「…何で?何でって…そりゃ、面白い…からだろ?」

 

人が化け物に食われるのが面白いんだよ。そりゃあそんなもん見たくねえ奴もいるだろうが。人は残酷なのが見たいんだよ。ほら?エルディアの支配から解放されて何十年も平和だろ?大変結構なことだがそれはそれで何か物足りんのだろうな。生の実感ってやつか?それがどうしても希薄になってしまったようだ。

自分が死ぬのは今日かもしれんと日々感じて生きてる人がどれだけいるか知らんが、本来はそれが生き物の正常な思考なのだよ。平和な社会が当たり前にあると思っている連中の方が異常なのさ。俺は違うがな。

人は皆いつか死ぬが俺はその日が来てもその現実を受け入れる心構えがある。なぜならこうやって残酷な世界の真実と向き合い、理解を深めているからだ。当然楽しみながら学ぶことも大事になる。あぁお前の妹を息子たちの犬に食わせたのも教育だ。おかげで息子たちは立派に育ったよ。

 

しゃべりながら小太りの男は受刑者に注射を打ち、突き落とす。

 

「心は痛まないのか?」

「…まぁ、言いたいことはわかる。もし息子が同じ目に遭ったらと思うと胸が締め付けられる。その子が何か悪いことをしたわけでもなかったのにな…」

「ああ…妹は飛行船が見たかっただけなんだ。あれに乗ってどこか遠くに行く夢を見たかったんだ」

「…かわいそうに。エルディア人でさえなければな……」

「…は?」

「あれをよく見ろ。あれがお前らの正体なんだぞ?」小太りの男は下で巨人になった受刑者を指さして言う。

 

巨人の脊髄液を体内に吸収しただけで巨大な化け物になる。これが俺らと同じ人間だとでも言うつもりか?こんな生き物はお前らエルディア帝国の「ユミルの民」以外に存在しない。こんな人の皮を被っただけの怪物が大量に繁殖しちまったのはまさしく悪夢だよ。

まぁ今でこそ平和だが。そいつらの支配からようやく解放されたと思っていても、たまにお前らのようなネズミが湧くからな。わかるか?

 

エルディアをこの世から一匹残らず駆逐する。これは全人類の願いなんだよ。

 

「…何だと?」

「家に棲みついたネズミを放置すれば深刻な伝染病を招く恐れがある。ならば当然ネズミは駆除しなければならない。心は痛まないのかって?痛むわけないだろ?人を殺してるみたいに言うなよ。人殺しはそっちだろ?お前ら復権派は俺達マーレに何をしようとした?エルディア帝国と同じ道を辿ろうとしたよな?

心は痛まなかったのか?」

 

小太りの職員はグリシャを下に落とそうとする。グリシャは抵抗する。とその時…ドンッ

傍にいたもう一人の職員が小太りの職員を突き飛ばした。男は下に落ちて、叫び声を上げながらさっきの受刑者の巨人に食われる。

 

「何だ――!?グロス曹長が落ちたぞ!?」船の辺りで待機していた職員たちがザワつき出す。

グロス曹長を突き飛ばした職員はナイフを手に持って、自分の手のひらを切る。

「俺がフクロウだ。覚えておけよグリシャ。巨人の力はこうやって使う」

男は巨人化し、蒸気船をへし折って沈め、近くにいた職員も全員握りつぶして海に捨てた。そして人間に戻り、グリシャの元に戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

第88話 進撃の巨人

「…フクロウ、あんたは何者だ?」

 

俺はエレン・クルーガー。エルディア人で「九つの巨人」の1つを身に宿している。マーレ人になりすまし当局に潜入していた。

 

父親は、大陸に留まった王家の残党が結成した革命軍の一員だった。革命軍は何も成し遂げることなく、皆その家族と共に生きたまま焼かれた。クルーガーは戸棚の中に隠れていて、家が焼け崩れる前に父親の仲間に助けられた。それ以来、マーレへの復讐とエルディアの復権を誓った。

だが俺が実際にやったことは救うべき同胞の指を詰め…ここから蹴落とし巨人に変えることだ。それに徹した結果、今日まで正体を暴かれることはなかった。

 

「グリシャ…お前に最後の任務を託す。他の誰でもなくお前にだ。これから壁内に潜入し、始祖の巨人を奪還しろ。俺から巨人を継承し、その力を使ってな」

「何だって?じゃあ…あんたは」

「巨人化したお前に食われる。巨人の力無しに壁まで辿り着くことはできない。同じようにして始祖の巨人の持ち主から力を奪え」

「なぜあんたがやらない?」

「九つの巨人の力を継承したものは13年で死ぬ。俺が継承したのも13年前になる」

 

俺はもうすぐ死ぬ。もしお前達がこのことを知っていたら、ジークやダイナに始祖を継承させることを躊躇したはずだ。これはユミルの呪いだ。13年は始祖ユミルが力に目覚めてから死ぬまでの年月に相当する時間だ。始祖ユミルを超える力は持てない。その時が近づけば体が衰え…器はその役割を全うする。

また、九つの巨人を宿す者が力を継承することなく死んだ場合、巨人の力はそれ以降に誕生するユミルの民の赤子に突如として継承される。それはどれほど距離が離れていようと関係なく、血縁の近親者に関わるものでもない。

すべての巨人とすべてのユミルの民は、空間を超越した「道」で繋がっている。巨人を形成する血や骨はその道を通り送られてくる。時には記憶や誰かの意志も同じようにして道を通ってくる。そしてその道はすべて一つの座標で交わる。つまりそれが…始祖の巨人だ。

 

グリシャはクルーガーに尋ねる。ダイナが王家の血を引く者だと、俺はお前の部下に話した。それを口止めしたのはお前か? 「そうだ」 なぜだ!?

 

「死ぬまで敵国のために子を産まされ続ける生涯の方が良かっただろうか……?実際…人を食う化け物に変えられるのとどっちがマシか、彼女に聞いたわけじゃなかったが……あの最期を見る限り、間違ってなかった……と思う」

 

…とはいえ他の同胞たちを救えなかったのも、すべては俺の力が足りなかったからだ。ここから生きて壁まで辿り着けるのは、巨人の力を宿した者ただ一人だけだ。俺は務めを果たした。お前もそうしろ。

 

「…俺は…何もわかっていなかった…仲間を失うことも、妻と息子を失うことも、指を切り落とされる痛みも。

これが自由の代償だとわかっていたなら、払わなかった」

俺に残されたのは…罪…だけだ。そう言ってグリシャは取り合わない。

 

「それで十分だ。お前を選んだ一番の理由は、お前があの日壁の外に出たからだ。

 

あの日お前が妹を連れて壁の外に出ていなければ、お前は父親の診療所を継ぎ、ダイナとは出会えず、ジークも生まれない。

大人になった妹は今頃結婚し、子どもを産んでいたかもしれない。

 

だがお前は壁の外に出た。

俺達は自由を求め、その代償は同胞が支払った。そのツケを払う方法は一つしかない。

俺はここで初めて同胞を蹴落とした日から、お前は妹を連れて壁の外に出た日から、その行いが報われる日まで進み続けるんだ。死んでも、死んだ後も」

 

グリシャの顔がさっきと変わる。グリシャはすっくと立ち上がり、クルーガーの目を真っすぐ見る。覚悟が決まったようだ。

 

「九つの巨人にはそれぞれ名前がある。これからお前へと継承される巨人にもだ。その巨人はいついかなる時代においても自由を求めて進み続けた。自由のために戦った。名は、進撃の巨人

 

クルーガーは注射器に巨人の脊髄液を入れながら、グリシャに話しかける。

「家族を持て。壁の中に入ったら所帯を持つんだ」

「…何を言ってる?俺にはダイナがいる…」

「妻でも子供でも街の人でもいい。壁の中で人を愛せ。それができなければ繰り返すだけだ。同じ歴史を、同じ過ちを。何度も」

そう言って、クルーガーはグリシャに注射を打つ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第89話 会議

エレンはグリシャが巨人の力を継承した時の記憶とつながった。エレンの母やハンネスを食った巨人はダイナだったと知る。

アルミンはあと13年、エレンはあと7年くらいの命だ。

エレンとミカサは兵規違反で懲罰房の中にいた。懲罰の日数はまだ残っていたが、ヒストリア女王がエレン達のいるトロスト区に来て、会議や催事を行うため釈放となった。

 

憲兵団、調査兵団、駐屯兵団の幹部とヒストリア、ザックレー総統が一室に集まり、会議が開かれる(調査兵団は療養中のサシャを除く8名全員が参加)。

 

グリシャの地下室で見つけた3冊の本の存在を知るのは、現在この部屋にいる者のみ。本はそれぞれ「グリシャ・イェーガー氏の半生」、「巨人と知りうる歴史の全て」、「壁外世界の情報」であった。

 

今の状況を整理すると、壁内の人類は皆エルディア国の中の巨人化できる特殊人種「ユミルの民」で、壁外世界ではその全滅が望まれている。今エレンが持っている始祖の巨人がマーレの手に渡れば、ユミルの民は軍事転用か根絶やしか、どちらかになるだろう。

なので、壁内人類はマーレや他の壁外の敵から身を守るしかない。その手段は、始祖の巨人の真価を発揮させて「壁の巨人」を発動する以外に無さそうだが、それも145代目の王の思想「不戦の契り」があるため使えない…。だが、一度エレンは無垢の巨人を操ったことがあるので、可能性はゼロではなさそうだ。

 

そして、3冊の本の情報は公表されることになった。100年前レイス王が民から奪った記憶を、100年後の民にお返しするだけ。ヒストリア女王はそう言った。

 

会議はそこで終わり、後日、今回の成果に対する調査兵団の勲章授与式が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第90話 壁の向こう側へ

時は流れ、トロスト区外門が破壊されてから1年。一度目の超大型巨人襲来から6年。ウォール・マリア内の巨人は掃討され、道の舗装が進み、シガンシナ区を拠点とする住民の入植が許可された。

 

そして調査兵団はウォール・マリア外への壁外調査を行った。巨人は見つからず、どうやらみんなウォール・マリア内に入ってきていて、それを1年の間に駆逐してしまったらしい。調査兵団はあっさりと目的の場所に辿り着く。それは、あの「楽園送り」の入り口であるうず高い壁、そしてその先にある「海」。アルミンはついに、本でしか見たことがなかった海を現実に見る。

 

「ほら…言っただろエレン。商人が一生かけても取り尽くせないほどの巨大な塩の湖があるって…。僕が言ったこと…間違ってなかっただろ?」

「あぁ…すっげぇ広いな…。

…壁の向こうには…海があって、海の向こうには自由がある。ずっとそう信じてた。…でも違った。海の向こうにいるのは敵だ。何もかも親父の記憶で見たものと同じなんだ…。

…なぁ?向こうにいる敵…全部殺せば…オレ達、自由になれるのか?」