缶ヶ江メグルは進撃の巨人が好き

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壁の向こう側に行く

23巻あらすじ 4年後 大陸のエルディア人の話

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第91話 海の向こう側

 

パラディ島でエレン達が海に辿り着いた時から約4年、その間、海の向こう、マーレ国は中東連合国とずっと戦争をしていた。それも今大詰めで、マーレが敵の軍港にいる中東連合艦隊を沈めれば勝ちというところまできていた。しかし軍港の近くに高台があり、そこを陣取っている敵軍のスラバ要塞が邪魔をしている。巨人を兵力に擁するマーレ陸軍は今、スラバ要塞の目の前まで来ており、何としてでもこの要塞を落とすことが目下の任務であった。

 

要塞外壁から離れた塹壕(ざんごう)の中で、マガト隊長率いるマーレ陸軍部隊が作戦を練っていた。部隊を構成するのはほとんどがエルディア人の戦士隊で、800人もいる。彼らの指揮を執るのがマーレ人のマガト隊長とコスロ副長だ。他に、マーレの戦士候補生の子どもも5人いた。一人は獣の巨人の継承予定者、コルト・グライス。あとの4人は、任期があと2年に迫っている鎧の巨人の継承候補者で、ガビ、ファルコ、ウド、ゾフィア。マーレ国が予算を大きく割いて鍛えてきた候補生をなぜこんな危なっかしい戦闘の最前線に連れてくるのか…。ガビは、それは次の「鎧」継承者に誰がふさわしいかをマガト隊長が見極めるためだと言うが…。

 

戦局は滞っていた。敵の塹壕とトーチカ(機関銃や砲台などを備えた、コンクリート製の堅固な小型防御陣地。ロシア語)は隙が無く、どこから歩兵が攻め入っても撃たれてしまう。そこでコルトは顎(あぎと)の巨人と車力(しゃりき)の巨人を放ち、速攻で塹壕とトーチカを殲滅させる案をマガト隊長に進言する。

しかし隊長はダメだと言う。なぜなら、要塞を囲むように線路が引いてあり、そこを対巨人砲を搭載した装甲列車が走るからだ。対巨人砲は連合国側の新兵器で、100mmの口径から放たれる徹甲弾は巨人の体を撃ち抜く。もし顎と車力を放って、うなじを撃ち抜かれたら終わりだ。なのでマガト隊長は、800人のエルディア人戦士隊(歩兵)を突撃させ、装甲列車を破壊する作戦を準備していた。

 

その時、装甲列車がマガト隊長たちのひそむ塹壕に一番近い線路を選んで走ってきた。…チャンスだ。

 

「それ私にやらせて下さい」ガビがマガト隊長に話しかける。

「あ?」

「私なら一人で装甲列車を無力化できます」

「お前らを鍛えるのに国がいくら費用をかけたと思ってる?却下だ」

 

確かに私はファルコ達なんかと違って逸材ですし、今後私のような優秀な戦士は二度と現れないでしょう。しかもすごくかわいいし。ですが私が成功すれば800人の戦士隊を失わずに済みます。

 

「失敗すれば?」

「一人の有望な戦士候補生と、7本の手榴弾を失います」

 

やはり…私に800人の戦士隊以上の価値があるとなれば仕方ありませんが、隊長殿がもし…私を愛するあまり800の兵を捧げるということでしたら――

 

「わかった、行け」

「必ずや私が『鎧』を継ぐに値する戦士であることを証明して参ります」

 

ガビは兵服を脱ぎ、マガト隊長から腕章を外す許可をもらい、敵にエルディア人ではないとアピールしつつ、両手を上げて 投降しに来る風に 線路の方に近づいてゆく。手榴弾を足にかけて引きずりながら…。トーチカの兵士はガビを発見するが、撃つかどうかためらっている。ガビは十分に近づいた所で地面に倒れ込み、足に引っかけていたロープを外し、手に持つ。敵兵はまだ撃ってこない。

装甲列車がガビのいる近くにやってくる。

 

「ここ――ッだぁ!!」

ガビは手榴弾のピンを抜き、線路に向かってぶん投げる。手榴弾は線路の上に落ち、装甲列車がそこを通る時、爆発した。ドオオォォオォォン!!

 

装甲列車は爆発で車体が浮き上がり、脱線してトーチカと塹壕の側に横倒しになった。ガビは「ぎゃあぁはははは…」と大声で叫びながらダッシュで逃げる。

 

装甲列車は無力化され、巨人の脅威はなくなった。マガト隊長は迅速に指示を出す「ガリアード(顎の巨人の人)急げ!!」

トーチカからガビを狙ってマシンガンが撃たれる。ガガガガガガガガ…

「ガビ!!」ファルコは夢中で塹壕から飛び出し、ガビの元へ走る。

ガビは一番近くの塹壕に飛び込み、ファルコもほぼ同時にその塹壕に飛び込む。その時、顎の巨人が駆けつけてきて銃弾からガビを守った。ファルコはガビに覆いかぶさるようになって、ガビを守ろうとする(あまり意味はないかもしれないけど)。

 

 

顎の巨人は銃弾をものともせずトーチカに突っ込み、片手で破壊する。そのまま塹壕にいる敵を端から手で潰してゆく。800人の戦士隊も出撃、車力の巨人も駆けつけ、敵のトーチカと塹壕を潰しにかかる。敵の防御線は一気に崩れてゆく。

 

マガト隊長がコルトに話しかける「お前はこれをどう見る?」

「敵前線の打撃は十分と見ます。戦士隊は前線から撤退し 敵の退路を確実に塞ぐべきかと。後は…空挺部隊次第です」

「その通りだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第92話 マーレの戦士

 

ヒュウウゥゥゥ… パァァァァン! 空高く花火のような弾が撃たれる。撤退の合図だ。巨人を除く800人の戦士隊は急いで要塞から離れる。要塞の上を見上げると、飛行船が飛んでいる。ジークとライナーが乗っていた。

飛行船からパラシュートを開いた人がたくさん放たれる。

 

「ウォォォオオオオォォォォオオォォ!!」

 

ジークが叫ぶと、パラシュートの人は皆「無垢の巨人」に姿を変えた。

巨人達は急降下して、雨のように要塞に降り注ぐ。ドドドドドドドドド…!!

 

落下した巨人の半分くらいは打ちどころが悪く死んだが、もう半分はむくりと起き上がって、近くにいる敵兵を捕えて食いはじめる。しかし敵も対巨人野戦砲で巨人のうなじを撃ち抜き、抵抗してくる。

 

 

ライナーは飛行船から飛び降り、鎧の巨人になって要塞の中に侵入する。

片っ端から敵の砲台を潰してゆく。敵も徹甲弾を鎧の巨人に撃ってくる。命中した個所は硬質化の鎧も貫いている。それでも顎の巨人に助けられながら、鎧の巨人は要塞内の全ての砲台を破壊する。鎧の巨人は空へ手を上げて合図する。

空からはジークがパラシュートで降りてきており、ライナーの合図を確認すると獣の巨人になって着地した。

 

獣の巨人は要塞内の徹甲弾の弾を片手で掴めるだけ拾って、以前パラディ島でエルヴィン達に岩の塊を投げたみたいに、軍港の艦隊めがけて豪速球で投げた。その時、敵軍艦から獣の巨人を狙って一斉に砲撃が撃たれた。

 

「ええぇ…?!」

獣の巨人は予想してなかった攻撃に反応できなかったが、すぐに鎧の巨人が駆けつけて獣の巨人の前に立ち塞がり、代わりに砲弾を受けた。鎧の巨人は首から下が吹っ飛んだが、おかげで獣の巨人は無事で、敵軍艦を全て沈めることに成功した。

 

 

連合艦隊の壊滅を受け、中東連合はマーレとの講和条約を締結。4年に及んだ戦争はマーレの勝利終結した。だが世界には巨人の力がすべてを支配する時代が終わりつつあることを知られ、マーレは一刻も早く「始祖の巨人」を手に入れる必要に迫られた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第93話 闇夜の列車

 

スラバ要塞近くの、戦場となった街、天井が崩れた建物の一室で、マーレ軍の幹部が集まって会議をしていた。

 

半島の自治権を巡る戦争に4年も費やした挙げ句、敵戦艦とこちらの主力の巨人2体があわや刺し違える失態を演じた。「人類の英知は遂にマーレの鎧を粉々に砕くまでに至った」どの国もそう報じ 中東連合国を讃えている。

 

「これが……彼の大国マーレの勝利だと言えるのか? マガト、これはどういうことだ?」

マーレ軍の元帥は尋ねる。

 

「元帥殿…いよいよその時が来たのです。人類が巨人の力を超える……その時が」

 

まずこの戦争の大半を占めた海戦において我々の巨人兵力は介入の余地が無かった。単純な海上戦力で比較するなら、連合の最新鋭の戦艦に対し我々は物量頼みの旧式の艦隊。しかし海軍が役に立たなかったというわけではなく…

 

すべては巨人の力にあぐらをかいたツケが回ってきた。それに尽きます。

 

我々が巨人の力を過信し植民地政策を進める中、巨人の力を持たぬ諸外国はそれに抗うべく兵器の開発に力を入れた。その純然たる結果を今突きつけられているのです。

それでも我が巨人兵力は当分の間、陸上戦においては無敵を誇ることでしょう。

 

…しかし、このまま航空機が発展していけば、いずれは何百キロもある爆弾が雨のように降り注ぐと言われています。その時には戦争の主戦場は空へと移り、大地の悪魔たる巨人はただ空を見上げ続ける他なくなるでしょう。

 

…部屋に沈黙が流れる。

 

「恐れながら…元帥殿。進言のご許可賜りたく存じます」ジークが口を開く。

「『驚異の子』ジークよ、言ってみろ」

 

「今こそパラディ島作戦を再開し、始祖の巨人の奪還を急ぐべきです」

「お前は…話を聞いていたのか?巨人の力に頼っていてはマーレに未来は無いのだ」マガトが口を挟む。

 

えぇ……マガト隊長の仰る通り、マーレは今後通常兵器の開発に力を注ぐべきです。しかしマーレの科学力が十分な水準に達するまで、マーレに仇なす国々は黙っているでしょうか?

今我々に必要なのは軍備再編までの空白を埋める時間。そのためには一刻も早く「マーレがパラディ島を占拠しすべての巨人の力を手に収めた」という新聞の見出しが必要なのです。

 

元帥「うーん…。お前の『任期』はあと1年足らずだったな……」

「えぇ…コルトが私の『獣』の能力をすべて引き継げるのか…私はとても不安でして…」

「そうだな…。…残り1年の命をもって4年前の雪辱を果たしたいというわけか」

「その通りでございます。あの忌まわしき驚異、グリシャ・イェーガーの行いに終止符を打つのは、かつての息子である私でなくてはなりません」

「さすがは『驚異の子』。幼子が親を売って示したその忠義、一度だって疑ったことは無い。お前の進言を党の議題に挙げてみよう」

 

会議はそこで終わる。

 

 

ジークとコルトは近くの建物の屋上で一服していた。

「悪かったなコルト。お前をダシにしちまって」

「…いえ。素晴らしかったです……。エルディア人がマーレ軍元帥に意見を通すなんて。それに一役買えたなら光栄なことですよ。…それに、実際その通りなんですから……。僕に今の『獣の巨人』の代わりは務まりません。…ジークさんは特別です」

 

あなたの脊髄液を投与された同志は、あなたが叫べば巨人になるし言うことも聞く。月が出ていれば夜にだって動ける。こんな能力歴代の『獣の巨人』にも無かったのに…。まるで話に聞く『始祖の巨人』だ。…どうしてジークさんは特別なんでしょう?王家の血を引いてるわけでもないのに。

 

(ジークは、母ダイナが王家の血を引いていることを秘密にしているらしい。クルーガーの読みとは外れている)

 

「さぁな…巨人学会の連中もお手上げらしい。結局俺が死ぬまでわからずじまいだろう。…あ。記憶を継承するお前には知られちまうかもな…コルト。俺の秘密を」

「秘密…ですか?」

「ケツの拭き方が独特なんだ。誰にも言わないでくれ」

「ダメだすべて話せ」マガト隊長がやってくる。

「ケツ毛の数まで申告してもらう。エルディア人にプライバシーは必要か?」

「隊長殿!!必要ありません!!」両手を上げるジークとコルト。

 

「密談の邪魔をしてしまったな。続けてくれ」

「エルディア人のケツに興味がおありですか?」

「ふっ…。さっきの会議はうまくいったなぁジーク。20年以上お前を見てきたが…未だ底知れぬガキのままだ」

「やだなぁ…買いかぶりすぎですよ隊長」

「1年でパラディ島を陥とせるらしいな」

「…私には1年しか残されていないという話ですよ」

 

この3年間、パラディ島に向かった調査船団は1隻も帰ってきていない。3年間で駆逐艦を含む32隻が島に消えたのだ。

ジーク、お前はこれをどう見る?

 

「私は…パラディ島勢力が保持する巨人は4体だと考えます。『始祖の巨人』『超大型巨人』『女型の巨人』『進撃の巨人』。『始祖』と『進撃』はエレン・イェーガー一人が身に宿しているとの見方が有力ですが。『超大型』と『女型』は現在も不明。両名が死んだとなればその力を宿した赤子が誕生するはずですが、こちらの大陸側では発見されていません。そうなると4体の巨人はパラディ島で運用されている可能性がある。

 

ことは22年前革命軍の残党「フクロウ」が隠し持っていた『進撃の巨人』とグリシャ・イェーガーを島に送り込んだことから始まった。そいつらの撒いた火種が島全体に燃え広がっちまったんでしょう。フリッツ王家は名をレイスに変え無抵抗主義を貫く姿勢であったようだが『進撃の巨人』にレイス王は食われ…継承の術と共にすべてを奪われた。

 

隊長……私の見立てはこうです。軍の船が逃げることも許されず、32隻も沈められたのなら、それは巨人1体の仕業とは考えにくい。少なくともエレン・イェーガーを含む巨人が2体以上、調査船に立ち塞がったのではないでしょうか」

 

「同じ意見だ。島を攻めるには戦艦の支援が必要になるだろう」

 

「えぇ…そして何より、敵の脅威は巨人だけじゃない。おかしな機械をつけた連中が両手に剣や爆弾を装備して飛び回るのです。巨人を殺すことだけを考えた武器だ。私の失態はその武器を甘く見積もったこと。そして王家の伝承のみの存在と思われていた一族、巨人化学の副産物 アッカーマン一族と思わしき存在が少なくとも二人。…正直、奴にはもう会いたくありません…」

 

 

 

 

 

一方、スラバ要塞近くの、戦場にはならなかった街。ベッド2コと机が1コしかない簡素な宿部屋で、ライナーはリヴァイやミカサに殺されかけた時のことを夢に見て、目が覚める。

 

「楽しい夢でも見てるみたいだったから起こさないでおいてやったよ」ガリアードはサンドイッチを食べながら、机に向かって書き物をしている。

「…あの時(スラバ要塞でライナーを狙っていた徹甲弾の砲撃手を潰してくれたこと)の礼を未だ言ってなかったな…。ガリアード…助かったよ」

「礼には及ばん。俺が助けたのはお前じゃない。お前が『鎧』を失うヘマから祖国マーレを救ったまでだ。…そもそも9年前のパラディ島作戦に俺が選ばれて、俺が『鎧』を継承していればこんなことにはならなかったんだ。アニキがお前をかばってその辺の巨人に食われることなんてなかった」

「マルセルの記憶を…見たのか?」

「いいや残念ながら。お前がアニキを置いて逃げる様はまだ見ていない。だが…前身のユミルって女のことは少しわかった……大層な名前をつけられた哀れな女だ。アニキの『顎』を返してくれたのもあの女の意志だろ?」

「あぁ…そうだ」

「…じゃあお前はあの島で何をしたんだ?誰かに助けられてばかりじゃねぇかよ」

「…あぁ…」

「女の記憶を通してお前を見たが…ありゃ何だ?ずいぶんと頼れる男を気取っていたようだったが…。ありゃ…まるでアニキの真似事じゃねぇか」

「…その通りだガリアード。お前の言ってることはすべて正しい」

「…あ?」

 

カチャッ 『車力の巨人』の持ち主のピークが部屋に入ってくる。

「ポッコ、艦砲射撃を食らった人をいじめちゃだめだよ」

「…その名で呼ぶなって言ってるだろピーク」

 

ライナーがピークに尋ねる「…大丈夫か?」ピークは左脇に松葉杖をついている。

「人間に戻るのは2ヶ月ぶりだからね。その度に二足歩行を忘れてしまうよ(つまりケガをしているのではなく、ただ歩くために杖をついていると)。それよりライナー、もう起きれるようになったんならガビ達に顔を見せてあげなよ。すごく心配してたよ」

「そうしよう」

ライナーはベッドから腰を上げ、部屋を出ていく。

 

 

ライナーは街の船着き場にいた戦士候補生のガビ、ウド、ゾフィア、ファルコと一緒に、街を回る。候補生の子たちはライナーが元気になったのを嬉しそうにしている。特にガビは。

 

 

戦士隊たちはその夜、列車でレべリオ収容区まで帰ることになっていた。

その車内、コルトは酒に酔った勢いで大騒ぎしていた。今回の戦場でのガビの活躍を讃え、戦士隊の皆と一緒になってガビコールを唱えている。ガビもそれに乗っかって、歓声を上げる。

 

「また見事に担がれたな」ライナー

「兄に酒を飲ませるのが悪いんです…ガビの奴もすぐ調子に乗るから…」

「しかし…実際に『鎧』の継承権を獲得するのはガビになりそうだ」

「…そうですね。あなたの任期はあと2年ですから。あなたを慕う少女がこのまま順調に『鎧』を継承すれば…ガビの寿命は27歳…艦砲射撃の的にならなければですが。…あなたは…それでいいんですか?」

 

ライナーがかがみ込んで顔をファルコの真横に持っていく。すごく険しい形相で。

「今…お前…何って言った?『九つの巨人』を継承する名誉を冒涜したのか?これは直ちに隊に報告しなければならない」

「え…」

「俺じゃなくても誰かが聞いていれば即密告だ。そうなれば…コルトは『獣』の継承権を剥奪されるどころか、お前は親族と共に巨人兵器に加えられる。次に飛行船から投下されるのはお前ら謀反人グライス家一行だ」

「ま…待って下さい。発言を訂正させて下さい」ファルコは血の気の引いた顔で答える。

「戦士候補生ファルコ・グライスは己と一族を悪しきユミルの血から解放するべくこの血を生涯マーレに捧げます」

「では『九つの巨人』を継承する名誉を何と心得る」

「名誉マーレ人として栄誉と誇りを授かり、祖国マーレへの忠誠を存分に示す権利が得られることと存じます」

「お前は…『鎧の巨人』を継承したいのか?」

ファルコは一回視線をガビに移し、切なそうな表情になる。しかしすぐライナーに向き直り、まっすぐ2つの眼を見開いて言う。

「『鎧の巨人』を継承するのはオレです」

ライナーの表情から険しさが消える。

「そうだ。ガビを守りたいならお前がガビを超えるしかない」

「……?…え?」

ライナーは両手をファルコの肩に乗せて、少し哀しい顔をする。

「お前がガビを救い出すんだ。この真っ暗な俺達の未来から…」

 

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

列車は闇夜の中、レべリオを目指し走る

 

 

 

 

  

 

 

第94話 壁の中の少年

 

翌朝、列車はレべリオに到着。

…ブラウン副長…ファルコは列車を降りて歩きながら、ライナーの方を見やる。

 

4年前は…パラディ島作戦失敗の責任を一手に引き受けて『鎧』を剥奪される寸前の危うい立場だったけど、命を賭した戦果の数々でマーレへの忠誠を証明し、今や『鎧』の剥奪なんて声はどこからも聞こえなくなった…

 

そうだ…昔からどの戦士よりも高い忠誠心をマーレに示してきた。それがライナー・ブラウン戦士隊副長だ。

でも…昨夜の副長は何だ?俺にガビを救えって?他の人に聞かれでもしてたら危険な話を自らオレに…

ブラウンさんはオレと同じ考えで、エルディア人を戦争から解放したいと思っているんだろうか…。だとしたら、信じて…いいのか…?

 

 

駅から収容区までは街を隊列組んで歩くが、街の人(マーレ人)の目は冷たい。でも戦士隊の人は皆そんな目気にしないかのようにまっすぐ、堂々と前を向いて歩いてゆく。

 

そして戦士隊一行は収容区に到着し、各々待っていた家族の元へゆく。皆家族との再会に喜んでハグしたり、「無事で良かった」「立派に務めを果たしたな」とねぎらいの声をかけられている。

 

ガビはライナーにとって従妹(いとこ)になるらしく、今日はライナーの母カリナが家でお祝いをすると言う。

 

 

夜、ライナーの家ではブラウン家が会食をしていた。

ガビが、スラバ要塞で一人で装甲列車をつぶしたところを熱っぽくしゃべっていた。

 

「そこでバタッと倒れたの!トーチカの敵は案の定女の子の私を撃つのをためらってくれたんだけど、それでも私はいつ撃ち殺されてもおかしくない状況だった。

そんな中で装甲列車が来るのを待った。そしてここしかないってタイミングで爆弾をぶん投げたら……ドッカーン!!

狙った通り!!装甲列車は脱線してひっくり返った!!私の作戦大成功!!」

 

おおおぉ…!皆から歓声が上がる。

 

「でも敵は逃げ去る私に機関銃を撃ってきた!!穴ぼこめがけて必死に走ったよ!!私は鉛玉を食らう寸前のところで―― …ガリアードさんが『顎の巨人』で私を守ってくれて助かったの」

「すごいわガビ!!」ガビ母

「お前はエルディアの救世主だ!!」ガビ父。ガビの頭をわしわしとなでる。

 

するとカリナ「ライナー。ガビは戦士になれそうなのかい?」

「あぁ…今回の戦果を踏まえても、ガビが『鎧の巨人』の継承権を得るのは決定的だと思う」

「それはよかった…一族から二人も戦士を授かるなんて、お前達がマーレに認めてもらえたことを誇りに思うよ。あとは…あの島に住む悪魔共さえ消えてくれれば…エルディア人はみんな幸せになれるのにね」

 

ガビ「…大丈夫だよカリナおばさん。私達戦士隊が島の悪魔からエルディア人を守るから、心配しないで」

「…ありがとうガビ」

 

名もなきブラウン家の一人の男性「戦争には勝ったが、依然として…いつ島の奴らが世界を滅ぼしに来るかわからない状態のままだ。こんな状態じゃ世界中の人々がエルディア人を恐れるのも無理はない」

 

ガビ父「なぁ…ライナー。お前でさえ島の悪魔から逃げるのがやっとだったんだろ?世界一の軍事力であるマーレの『鎧』でさえ…」

 

ライナーは沈黙している。

 

「ダメだよみんな…そんなこと聞いちゃ。島の内情はマーレ軍でも上の人しか知ることができない機密情報だって言ってるでしょ?それに…ライナーだって辛いんだから。

 

凶悪で残虐な悪魔たちの住む島に5年も潜入してたんだよ?そこでどんな辛い目に遭ったか…機密情報じゃなくたって言えないんだよ」

 

「そうだな…わが甥よ悪かった」ガビ父

「お前の立場も考えずに…」名なしのブラウン家男性

 

ライナーが実際にパラディ島で経験したことと、ガビ達が想像していることとの間にはギャップがある。マーレはレべリオ収容区のエルディア人に、パラディ島のエルディア人は滅ぼすべき悪魔だと教育しているようだ。

 

「…いいや話せることもある。俺はあの島で軍隊に潜入したんだ。まさに地獄だった。島の連中はまさしく悪魔で残虐非道ま奴らだったよ。

あれは軍の入隊式の最中だった…突然芋を食い出した奴がいた。教官が咎めると、悪びれる様子もなく答えた。うまそうだから盗んだと。そんな悪党だが、さすがにまずいと思ったのか、その芋を半分譲ると言って教官を買収しようとしたんだ。しかし…その差し出した芋でさえ半分には到底満たない僅かなものでしかなかった。奴らに譲り合う精神など無いからな。

 

本当に…どうしようもない奴らだった。

便所に入るなりどっちを出しに来たのか忘れるバカだったり、(コニー)

自分のことしか考えてねぇ不真面目な奴に、(ジャン)

人のことばっかり考えてるくそ真面目な奴、(マルコ)

突っ走るしか頭にねぇ奴に、(エレン)

何があってもついて行く奴ら。(ミカサ、アルミン)

 

それに…色んな奴がいて、そこに俺達もいた」ライナーは訓練兵時代のことを思い出して少し穏やかな表情が出る。しかしハッと気付いたのかすぐ険しい顔に戻り、口を開く。

「そこにいた日々はまさに地獄だった」

 

皆しぃんと静かになってライナーの話を聞いていた。

 

「…少し話しすぎた。この話は忘れてくれ」

「いろんな奴らって何…?悪い奴らでしょ?」ガビ

「そうだよガビ…島にいるのは悪魔だ。世界を地獄にして屍の山に自分たちの楽園を築いた悪魔だ。

でも私達は違う。私達大陸のエルディア人は生涯を捧げてマーレに及ぼした凄惨な歴史を償う、善良なエルディア人なんだから。島の奴らはいつ強大な巨人で世界を踏み潰し進撃してくるかわからない。それを阻止するのは私達エルディア人でなくてはならない」

「うん」

「それが果たされて初めて私達は世界から良い人だと認めてもらえるんだから」

「うん」

「私達を置き去りにして島に逃げた奴らに…制裁を与えなくてはならない。私達を見捨てた奴らに…」

 

ライナーのうっかり話し過ぎたのをフォローするように、カリナはガビに言い聞かせた。その目には強い憎しみの思いが込められているように見える…

 

 

深夜。ライナーは自分の部屋のベッドで仰向けになって宙を見ている。

ライナーが子どもの頃、母カリナに言われたことを思い出していた…

 

――私達は見捨てられたんだ…だから壁に囲まれた収容所に住んでいるんだよ。私達には過去に悪いことをした悪魔の血が流れているからね。檻の中に入っていないとみんなの迷惑になるんだ。

 

お前にお父さんがいないのもそのせいだ。お父さんはマーレ人だからね。マーレ人はエルディア人と子供を作ることを固く禁じられているから…。だから…このことは秘密だよ?

 

「うん」

 

私達が悪魔の血を引くエルディア人だから…あの人とは一緒にはいられないんだよ。…マーレ人に生まれていれば…

カリナは泣きながらそう言った。

 

 

そうだ…あの頃俺は、母とマーレ人になるために戦士を目指したんだ…

 

思いリュックサックを背負い、大きなライフル銃を抱えながら走る体力試験。ライフル銃の射撃試験。武器を持たないで闘う試験…。あらゆる試験でライナーよりも能力の高い誰かが戦士候補生に合格してゆく。

 

クソックソックソッ…! ライナーは焦る。

 

その後試験がすべて終わり、幸運にもライナーは戦士候補生に選ばれる。

 

 

 

そしてある日の戦士候補生の訓練の時、休憩中に、訓練の教育を任されているらしいコルトから思わぬ朗報を聞く。

「お前ら知ってるか?あと数年でパラディ島に攻撃を仕掛けるってさ。俺達が巨人を継承する時が来たんだよ。

もうじき南との戦争に目処がつく。そして我らの戦士にも任期が迫ってきている。そこで軍の新体制の中で戦士隊は再編成されるらしい。俺達7人の戦士候補生から一挙に6人だ」

 

「やったぁ…これで…マーレ人に…なれる」ライナーは嬉しそうに言う。

「は?何が『やった』だ。お前はこの中のドべだろうが…。一人余るんならお前だろ」

「…なんだと」

「お前の長所は何だよ。体力か?頭脳か?射撃か?格闘術か?どれも違うよな?お前が評価されたのは試験で綴ったマーレへの忠誠心だろ?

 

それにしちゃ尊敬するぜ。毎日毎日隊長への媚びへつらいを欠かさねぇ。島の悪魔共はボクが必ず皆殺しにしてみせますってな」

 

「島の奴らは世界を恐怖に貶める悪魔だろうが!!」

「うお…」

「奴らを殺さなきゃまたいつか殺戮を繰り返すんだぞ!?お前は俺達の任務を馬鹿にするのか?それともお前はフリッツ王を支持するエルディア復権派の残党か!?」

「は…!?」

「そうだろ!!間違いない!!俺が隊長に報告してやる!!」

「てめぇ…!!ふざけんな!!」

 

バコッ!!  ライナーはポルコ(ポッコ)にグーでぶたれて倒れる。

「島の恨み節くらい誰だって言えんだよ!!」

「うぅ…」

「てめぇは一人で留守番して13年待つんだな!!」

「クッソぉ…」ライナーは地面に這いつくばって泣いている。

 

「もう行こーぜ!!」ポルコ

「ライナーすまない…」マルセル(ポルコの兄)

「泣き止んだらすぐに来いよー。遅いと俺がマガト隊長にどやされんだからさ」コルトはそう言い、先頭をきって皆を連れていく。

 

 

 

「立ってよライナー」ベルトルトがライナーに手を差し出す。ライナーはベルトルトの手をしっかり握って立ち上がる。

「13年も…待ってられない」

「え?」

「俺は…マーレ人になって母さんと父さんと3人で暮らしたいんだ」

「どういうこと?」

「それは…言えないけど…」

「まだ13年待つって決まってないよ。継承権を与えるのはポルコじゃない。マーレ軍が決めるんだから」

「でも…あいつの言う通り俺はドべだし…」

「そうかなぁ?忠誠心は大事だと思うけど…ねぇ?君もそう思わない?アニ」

 

「え?…何?聞いてなかった」アニは一人で虫を踏んづけて遊んでいた

「さぁ行こう」アニは一人で走り出す。ベルトルトとライナーもつられて走り始める。

 

「でも…いいの?」

「え?」

「そんな目標があるのに…13年しか無いんだよ?」

「…13年で英雄になるんだろ?世界を脅かすパラディ島の悪魔を成敗すれば、エルディア人を…いや世界を救えるんだ。そしたら俺は世界一の自慢の息子になれるのに…」

ライナーは訓練所の高い壁を見上げながらそう言う。

 

 

 

一方同じ時のパラディ島 壁の中 ウォール・マリア南のシガンシナ区。エレンは川辺の草地に足を投げ出して座って、ぼーっと壁の方を見つめていた。

「はぁ…何か起きねぇかなぁ…」

 

タッタッタ… アルミンが何か本を抱えてエレンの元へ走ってやってくる

「エレンここにいたんだ」

22巻あらすじ グリシャの任務/調査兵団、海に辿り着く

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第87話 境界線

グリシャは治安当局の職員から拷問を受ける。裸で、椅子に体と四肢をベルトで固定され、「知らない」と言えば指を一本ずつ切り落とされる…。グリシャが知っていることを全て話したところによると、復権派の計画は、始祖の巨人の力を引き合いに東のマーレ敵対国に支援と亡命を呼びかける所まで進んでいたらしい。そしてフクロウの正体はグリシャも知らず、治安当局もわからないままであった。蒸気船で楽園に行く時間となり、グリシャ達はパラディ島 楽園の入り口、30mの高さの人口絶壁の上に連れて行かれる。

 

ここでグリシャ達は国家反逆罪により終身刑となり、これから知性の無い「無垢の巨人」にさせられる。人を感知し、人を追跡し、人を食らう。ただそれだけを死ぬまで繰り返し、そして死ぬ術がほとんど無い。

グリシャは刑を執行するリーダー的な職員2人をどこかで見たことがある…。

 

「さぁ今回は数が多いぞ!!どんどんやっていこう!!」

小太りの職員がそう言うと、復権派の仲間たちは次々と注射を打たれ、壁から突き落とされる。そして巨人化し、一番最初に人のまま突き落とされたエサ、グライスを感知して走ってゆく。

 

次に連れて来られたメンバーの中に一人の女性がいた。ダイナだった。なぜ…ここに?

俺は洗いざらい話したはずだ。彼女は王家の血を引いているエルディア人だから、マーレにとっても始祖の巨人の力を操るのに必要なはず…。誰かが揉み消したのか!?

 

「グリシャ…私は…どんな姿になっても…あなたを探し出すから」ダイナは注射を打たれ、壁の下に突き落とされる。

「ダイナアアアアアアアアアアアア!!」

 

小太りの職員「ハハハハハ。見ろ、お前には目もくれずグライス君を追ってるぞ。本当はあっちの男に気があったようだな」

「黙れ」グリシャは2人の職員のことを思い出していた。

「お前だろ、15年前…俺の妹を犬に食わせたのは…8歳の妹を犬に食わせたのは!!お前だろ!!」

 

小太りの職員はチッと舌打ちし、残り一人の受刑者を引き受け、職員を自分ともう一人のリーダー格の2人以外船に戻らせる。船に戻る職員たちの中で、事情を知らない者が尋ねる。

「どういうことですか?」

「ここからは曹長の趣味の時間だ、新入り。まぁあまり触れてやるな。…しかしエルディア人とはいえ8歳の娘にまで手が及んでいたとはな……」

 

 

 

「思い出したよ少年。お前は巨人にしないでやる。彼(残り一人の受刑者)に食べてもらうことにした。3~4mくらいの巨人に調整するから、こいつと戦ってくれ。それもできるだけ長く抵抗してくれると助かる」

「あんたは何で…こんなことするんだ?」

「…何で?何でって…そりゃ、面白い…からだろ?」

 

人が化け物に食われるのが面白いんだよ。そりゃあそんなもん見たくねえ奴もいるだろうが。人は残酷なのが見たいんだよ。ほら?エルディアの支配から解放されて何十年も平和だろ?大変結構なことだがそれはそれで何か物足りんのだろうな。生の実感ってやつか?それがどうしても希薄になってしまったようだ。

自分が死ぬのは今日かもしれんと日々感じて生きてる人がどれだけいるか知らんが、本来はそれが生き物の正常な思考なのだよ。平和な社会が当たり前にあると思っている連中の方が異常なのさ。俺は違うがな。

人は皆いつか死ぬが俺はその日が来てもその現実を受け入れる心構えがある。なぜならこうやって残酷な世界の真実と向き合い、理解を深めているからだ。当然楽しみながら学ぶことも大事になる。あぁお前の妹を息子たちの犬に食わせたのも教育だ。おかげで息子たちは立派に育ったよ。

 

しゃべりながら小太りの男は受刑者に注射を打ち、突き落とす。

 

「心は痛まないのか?」

「…まぁ、言いたいことはわかる。もし息子が同じ目に遭ったらと思うと胸が締め付けられる。その子が何か悪いことをしたわけでもなかったのにな…」

「ああ…妹は飛行船が見たかっただけなんだ。あれに乗ってどこか遠くに行く夢を見たかったんだ」

「…かわいそうに。エルディア人でさえなければな……」

「…は?」

「あれをよく見ろ。あれがお前らの正体なんだぞ?」小太りの男は下で巨人になった受刑者を指さして言う。

 

巨人の脊髄液を体内に吸収しただけで巨大な化け物になる。これが俺らと同じ人間だとでも言うつもりか?こんな生き物はお前らエルディア帝国の「ユミルの民」以外に存在しない。こんな人の皮を被っただけの怪物が大量に繁殖しちまったのはまさしく悪夢だよ。

まぁ今でこそ平和だが。そいつらの支配からようやく解放されたと思っていても、たまにお前らのようなネズミが湧くからな。わかるか?

 

エルディアをこの世から一匹残らず駆逐する。これは全人類の願いなんだよ。

 

「…何だと?」

「家に棲みついたネズミを放置すれば深刻な伝染病を招く恐れがある。ならば当然ネズミは駆除しなければならない。心は痛まないのかって?痛むわけないだろ?人を殺してるみたいに言うなよ。人殺しはそっちだろ?お前ら復権派は俺達マーレに何をしようとした?エルディア帝国と同じ道を辿ろうとしたよな?

心は痛まなかったのか?」

 

小太りの職員はグリシャを下に落とそうとする。グリシャは抵抗する。とその時…ドンッ

傍にいたもう一人の職員が小太りの職員を突き飛ばした。男は下に落ちて、叫び声を上げながらさっきの受刑者の巨人に食われる。

 

「何だ――!?グロス曹長が落ちたぞ!?」船の辺りで待機していた職員たちがザワつき出す。

グロス曹長を突き飛ばした職員はナイフを手に持って、自分の手のひらを切る。

「俺がフクロウだ。覚えておけよグリシャ。巨人の力はこうやって使う」

男は巨人化し、蒸気船をへし折って沈め、近くにいた職員も全員握りつぶして海に捨てた。そして人間に戻り、グリシャの元に戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

第88話 進撃の巨人

「…フクロウ、あんたは何者だ?」

 

俺はエレン・クルーガー。エルディア人で「九つの巨人」の1つを身に宿している。マーレ人になりすまし当局に潜入していた。

 

父親は、大陸に留まった王家の残党が結成した革命軍の一員だった。革命軍は何も成し遂げることなく、皆その家族と共に生きたまま焼かれた。クルーガーは戸棚の中に隠れていて、家が焼け崩れる前に父親の仲間に助けられた。それ以来、マーレへの復讐とエルディアの復権を誓った。

だが俺が実際にやったことは救うべき同胞の指を詰め…ここから蹴落とし巨人に変えることだ。それに徹した結果、今日まで正体を暴かれることはなかった。

 

「グリシャ…お前に最後の任務を託す。他の誰でもなくお前にだ。これから壁内に潜入し、始祖の巨人を奪還しろ。俺から巨人を継承し、その力を使ってな」

「何だって?じゃあ…あんたは」

「巨人化したお前に食われる。巨人の力無しに壁まで辿り着くことはできない。同じようにして始祖の巨人の持ち主から力を奪え」

「なぜあんたがやらない?」

「九つの巨人の力を継承したものは13年で死ぬ。俺が継承したのも13年前になる」

 

俺はもうすぐ死ぬ。もしお前達がこのことを知っていたら、ジークやダイナに始祖を継承させることを躊躇したはずだ。これはユミルの呪いだ。13年は始祖ユミルが力に目覚めてから死ぬまでの年月に相当する時間だ。始祖ユミルを超える力は持てない。その時が近づけば体が衰え…器はその役割を全うする。

また、九つの巨人を宿す者が力を継承することなく死んだ場合、巨人の力はそれ以降に誕生するユミルの民の赤子に突如として継承される。それはどれほど距離が離れていようと関係なく、血縁の近親者に関わるものでもない。

すべての巨人とすべてのユミルの民は、空間を超越した「道」で繋がっている。巨人を形成する血や骨はその道を通り送られてくる。時には記憶や誰かの意志も同じようにして道を通ってくる。そしてその道はすべて一つの座標で交わる。つまりそれが…始祖の巨人だ。

 

グリシャはクルーガーに尋ねる。ダイナが王家の血を引く者だと、俺はお前の部下に話した。それを口止めしたのはお前か? 「そうだ」 なぜだ!?

 

「死ぬまで敵国のために子を産まされ続ける生涯の方が良かっただろうか……?実際…人を食う化け物に変えられるのとどっちがマシか、彼女に聞いたわけじゃなかったが……あの最期を見る限り、間違ってなかった……と思う」

 

…とはいえ他の同胞たちを救えなかったのも、すべては俺の力が足りなかったからだ。ここから生きて壁まで辿り着けるのは、巨人の力を宿した者ただ一人だけだ。俺は務めを果たした。お前もそうしろ。

 

「…俺は…何もわかっていなかった…仲間を失うことも、妻と息子を失うことも、指を切り落とされる痛みも。

これが自由の代償だとわかっていたなら、払わなかった」

俺に残されたのは…罪…だけだ。そう言ってグリシャは取り合わない。

 

「それで十分だ。お前を選んだ一番の理由は、お前があの日壁の外に出たからだ。

 

あの日お前が妹を連れて壁の外に出ていなければ、お前は父親の診療所を継ぎ、ダイナとは出会えず、ジークも生まれない。

大人になった妹は今頃結婚し、子どもを産んでいたかもしれない。

 

だがお前は壁の外に出た。

俺達は自由を求め、その代償は同胞が支払った。そのツケを払う方法は一つしかない。

俺はここで初めて同胞を蹴落とした日から、お前は妹を連れて壁の外に出た日から、その行いが報われる日まで進み続けるんだ。死んでも、死んだ後も」

 

グリシャの顔がさっきと変わる。グリシャはすっくと立ち上がり、クルーガーの目を真っすぐ見る。覚悟が決まったようだ。

 

「九つの巨人にはそれぞれ名前がある。これからお前へと継承される巨人にもだ。その巨人はいついかなる時代においても自由を求めて進み続けた。自由のために戦った。名は、進撃の巨人

 

クルーガーは注射器に巨人の脊髄液を入れながら、グリシャに話しかける。

「家族を持て。壁の中に入ったら所帯を持つんだ」

「…何を言ってる?俺にはダイナがいる…」

「妻でも子供でも街の人でもいい。壁の中で人を愛せ。それができなければ繰り返すだけだ。同じ歴史を、同じ過ちを。何度も」

そう言って、クルーガーはグリシャに注射を打つ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第89話 会議

エレンはグリシャが巨人の力を継承した時の記憶とつながった。エレンの母やハンネスを食った巨人はダイナだったと知る。

アルミンはあと13年、エレンはあと7年くらいの命だ。

エレンとミカサは兵規違反で懲罰房の中にいた。懲罰の日数はまだ残っていたが、ヒストリア女王がエレン達のいるトロスト区に来て、会議や催事を行うため釈放となった。

 

憲兵団、調査兵団、駐屯兵団の幹部とヒストリア、ザックレー総統が一室に集まり、会議が開かれる(調査兵団は療養中のサシャを除く8名全員が参加)。

 

グリシャの地下室で見つけた3冊の本の存在を知るのは、現在この部屋にいる者のみ。本はそれぞれ「グリシャ・イェーガー氏の半生」、「巨人と知りうる歴史の全て」、「壁外世界の情報」であった。

 

今の状況を整理すると、壁内の人類は皆エルディア国の中の巨人化できる特殊人種「ユミルの民」で、壁外世界ではその全滅が望まれている。今エレンが持っている始祖の巨人がマーレの手に渡れば、ユミルの民は軍事転用か根絶やしか、どちらかになるだろう。

なので、壁内人類はマーレや他の壁外の敵から身を守るしかない。その手段は、始祖の巨人の真価を発揮させて「壁の巨人」を発動する以外に無さそうだが、それも145代目の王の思想「不戦の契り」があるため使えない…。だが、一度エレンは無垢の巨人を操ったことがあるので、可能性はゼロではなさそうだ。

 

そして、3冊の本の情報は公表されることになった。100年前レイス王が民から奪った記憶を、100年後の民にお返しするだけ。ヒストリア女王はそう言った。

 

会議はそこで終わり、後日、今回の成果に対する調査兵団の勲章授与式が行われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第90話 壁の向こう側へ

時は流れ、トロスト区外門が破壊されてから1年。一度目の超大型巨人襲来から6年。ウォール・マリア内の巨人は掃討され、道の舗装が進み、シガンシナ区を拠点とする住民の入植が許可された。

 

そして調査兵団はウォール・マリア外への壁外調査を行った。巨人は見つからず、どうやらみんなウォール・マリア内に入ってきていて、それを1年の間に駆逐してしまったらしい。調査兵団はあっさりと目的の場所に辿り着く。それは、あの「楽園送り」の入り口であるうず高い壁、そしてその先にある「海」。アルミンはついに、本でしか見たことがなかった海を現実に見る。

 

「ほら…言っただろエレン。商人が一生かけても取り尽くせないほどの巨大な塩の湖があるって…。僕が言ったこと…間違ってなかっただろ?」

「あぁ…すっげぇ広いな…。

…壁の向こうには…海があって、海の向こうには自由がある。ずっとそう信じてた。…でも違った。海の向こうにいるのは敵だ。何もかも親父の記憶で見たものと同じなんだ…。

…なぁ?向こうにいる敵…全部殺せば…オレ達、自由になれるのか?」

21巻あらすじ ウォール・マリア奪還成功 地下室の本、外の世界の話

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第83話 大鉈(おおなた)

シガンシナ区、建物の屋根の上。エレンはベルトルトを捕獲することに成功。傍には全身丸コゲになったアルミンが倒れている。アルミンが捨て身で囮にならなかったら、ベルトルトを捕まえることはできなかった。ドドドドドドッ!そこへ四足歩行巨人が接近してくる。それにはジークが乗っており、エレンに意味深なことを言う。

「信じてほしい。俺はお前の理解者だ。俺達はあの父親の被害者…お前は父親に洗脳されている」

 

ふとジークは壁上からこちらを見ている者に気付く。リヴァイだ。俺の大型巨人達を倒して追いついて来たのか…化け物め…

リヴァイが下に降りてくる。

「…エレン、いつかお前を救い出してやるからな」ドドドドド…

 

リヴァイがエレンの元に来る。

「今のでガスが完全に切れた。奴を追う。ガスと刃すべてよこせ」

エレンが自分のガスをカチャカチャと外す。その後ろで倒れているアルミンが、「ゴホッ」と一回咳をした…

 

 

 

一方ハンジとリヴァイ班(エレン、アルミン以外)はライナーの捕獲に成功し、ハンジが刃で止めを刺そうとしていた。しかしジャンが進言する。あの注射器を打って鎧の巨人の力を奪えるかもしれない…。ハンジは止めを刺すのを中止し、ミカサに指示をする。エレンとアルミンの元へ行き、ガスを補給してリヴァイを探し、注射薬を貰ってこい。なんらかの理由でそれが叶わぬ場合は信煙弾を撃て。ミカサはすぐに立体機動で飛んでゆく。しばらくして、信煙弾が撃たれる。その時、四足歩行巨人がハンジめがけて突進してきた。ドドドドドド…!

「ハンジさん!!」

ジャンはとっさに立体機動でハンジにぶつかりに行き、四足歩行巨人がハンジを食おうとしたのを間一髪避けた。しかし四足歩行巨人はその口にライナーをくわえ、そのまま逃げた。こうなるんだったら、進言なんかしなきゃ良かった…!ジャンは自分を責める。ハンジは「私の判断だ」と言う。エレンたちと合流しよう。

 

 

 

「やった!!やったぞ!!アルミンが息を吹き返した!!がんばれ!!もっと息吸え!!兵長!!注射を早く!!」

ちょうどミカサがやって来た時、アルミンが「ヒュ~ヒュ~」と弱々しく息をしはじめた。リヴァイは注射をアルミンにするかどうか判断しかねている様子だ。しかし今、他に近くにアルミンより瀕死で重要な人物はいない。エレンに注射器の箱を渡そうとする。

「リヴァイ…兵長。やっと追いついた」

そこへ騎馬特攻で生き残った新兵フロックが現れる。瀕死のエルヴィンを背負って…

リヴァイはエレンに渡そうとした注射器を引っ込める。エルヴィンをその場に仰向けに寝かせ、容体を確認する。…まだ息をしている。リヴァイが口を開く。

「この注射はエルヴィンに打つ」

さっきアルミンに使うって…。エレンは悲しみと怒りの混じった形相でリヴァイに詰め寄る。ミカサもエレンと同じような表情をしながら、刃を取り出してリヴァイの方に近づく…

 

 

壁上まで逃げてきたジークたちは、その様子を上から見ていた。どうやらリヴァイはこちらを追ってる場合じゃなさそうだ。ジークは「ライナー…お前は運が良かったね」とつぶやく。

 

 

 

 

 

 

第84話 白夜

俺は人類を救える方を生かす。アルミンの実績も決して捨てたものじゃないが、そのために調査兵団の団長を失うのはあまりにも大きな損失だ。しかしエレンは言うことを聞かず、注射器を力ずくで奪おうとする。リヴァイはエレンを殴り、その場に倒す。ミカサは目の色を変え、すかさずリヴァイに飛びかかる。リヴァイは今まで続いた激しい戦闘で弱っており、馬乗りになったミカサを払い除けることができない。

リヴァイは、エルヴィンなしに人類は巨人に勝つことができないと説くが、エレンは、アルミンがいなくたって無理だ、と反論する。しかしフロックも黙ってない。壁の向こう側で誰もが絶望する中、一人獣の巨人を討ち取る策を立て、実行したのはエルヴィン団長だと。だから人類を救うのは団長なんだ!フロックはミカサを止めに入ろうとする。ミカサは刃を構える。

「よせ!!」リヴァイが叫ぶ。

 

ドォッ!ハンジがミカサを後ろから羽交い絞めにし、リヴァイから引きはがす。リヴァイは注射器の入った箱を開け、準備を始める。

「うわあああああああああああああああ!!」ミカサが叫ぶ。

ハンジは、エルヴィンはまだ調査兵団に必要なんだと必死に説得するが、ミカサはまだ抵抗を続ける。

「私にも…生き返らせたい人がいる。何百人も…。調査兵団に入った時から、別れの日々だ」

ハンジは先ほど、ベルトルトが超大型巨人になって辺り一面を吹き飛ばした時、部下のモブリットに後ろから突き飛ばされて、爆発の前に井戸の中に一人放り込まれたことを思い出す。

「でも…わかっているだろ?誰にだっていつかは別れる日が来るって。とてもじゃないけど受け入れられないよ。正気を保つことさえままならない…。辛い…辛いよ。わかってる。それでも、前に進まなきゃいけない…」

ハンジのこの言葉にミカサは心を動かし、抵抗を止める。

 

ガシッ!エレンはリヴァイの足をつかみ、抵抗を諦めない、アルミンは戦うだけじゃない、海を見に行くっていう夢を見ている!

「オイ!!もうやめろよ」

フロックがエレンを引きはがす。リヴァイが指示を下す。全員ここから離れろ!!ここで確実にベルトルトをエルヴィンに食わせる!

 

皆が遠くから見守る中、リヴァイはエルヴィンの腕に注射針を刺そうとする。バッ!!突然エルヴィンの腕が注射を拒否するように動く。エルヴィンは挙手しているようなポーズになり、しゃべりだす。

「先生…… ……に……いないって…… ……やって調べたんですか?」

「…エルヴィン?」

エルヴィンは薄目を開けてゼェゼェと息をしながら、中空をまっすぐ見つめている。リヴァイは数時間前、エルヴィンに「夢を諦めて死んでくれ」と言った時のことを思い出す。あの時エルヴィンは穏やかな顔になって、

「リヴァイ…ありがとう」

と言ったのだった。リヴァイはまた、ケニーの死に際でのことも思い出す。あいつは注射器のセットを持っていて、自分に使おうと思えば使えたのに、最後までとっておいて、ついには自分に使わずリヴァイにあげて死んだ。

さっきエルヴィンが腕を払ったのは、「俺はいらない」という意味なのだろうか…?しかししゃべったのは彼の見続けている夢の話だった。…最後まで夢を見るのを諦めることはできない。でも俺はもう注射しなくていい。そう言っているように見えた…

 

バキバキバキバキ…。巨人が建物を壊しながら、ベルトルトを食おうと近づいている。巨人がベルトルトをつかむ。彼は目を覚まし、叫び声を上げるが、四肢が斬られているので抵抗できない。ベルトルトは助けを求めて叫びながら、巨人に食われる。

ベルトルトを食った巨人はその場にうずくまり、人の姿に戻ってゆく。アルミンの姿になる。104期兵の皆が駆けつける。

 

エルヴィンの傍にいるリヴァイとハンジは、それを見ていた。フロックもエルヴィンの近くにおり、リヴァイに尋ねた。

兵長…どうして…ですか?」

「…こいつを許してやってくれないか?こいつは悪魔になるしかなかった。それを望んだのは俺達だ…。その上、一度は地獄から解放されたこいつを……再び地獄に呼び戻そうとした。お前と同じだ。だがもう…休ませてやらねぇと…」

 

 

 

 

 

 

第85話 地下室

アルミンとサシャを内門の壁上に寝かせ、調査兵団はアルミンが起きるまで生存者の捜索をしていた。アルミンが目を覚ますと、全員壁上に集まり、途中から記憶がない彼に状況を話して聞かせた。

戦闘が終わってから4時間、未だ生存者は見つかっておらず、生き残ったのはここにいる9人、ハンジ、リヴァイ、エレン、ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャ、フロックだけだった。注射をエルヴィンに打たなかったのは、リヴァイが彼にこれ以上過酷な運命を背負わせたくなかったから、ということもアルミンに伝えた。また、次の調査兵団団長はハンジが務める。

 

そこまで話が終わって、ハンジはリヴァイ、エレン、ミカサと共に地下室へ調査に行くと言った。残りの4人に壁上から見張りをするよう指示して。

 

エレンの家の地下室へとつづく通路は無事で、中に入ると机の隠し引戸の二重底の下から、本が3冊出てきた。エルヴィンがずっと探し求めていたのはこれだった。

 

調査兵団はこれらの本を持ち帰り、夜明け頃ウォール・ローゼ トロスト区に帰還した。ウォール・マリアに着いて作戦を開始したのも夜明け頃だったので、ちょうど1日経ったことになる。あれだけの激戦を繰り広げたにしては、1日しか経っていなかったのかと感じる…。

 

 

 

 

 

 

第86話 あの日

グリシャの残した本には、彼の生い立ちと共に壁の外の世界について記されていた。冒頭はこんな文章から始まる。

「私は人類が優雅に暮らす壁の外から来た。人類は滅んでなどいない」

 

壁の中の世界では、人類を滅ぼしたとされている巨人。そもそも巨人たちはいつ生まれたのか?

それは今から1820年前、我々の祖先「ユミル・フリッツ」が「大地の悪魔」と契約し手に入れた力、巨人の力がはじまりなのだ。ユミルは死後、「九つの巨人」に魂を分けてエルディア帝国を築いた。エルディアは古代の大国マーレを亡ぼして大陸の支配者となる。そこから1700年の間は、エルディアが他の民族を侵略し、土地と財産を奪って、エルディア人の子どもを無理やり産ませた。

しかし、マーレは80年前、エルディアに内部工作を仕組んで成功する。九つの巨人の七つを自軍の味方につけ、巨人大戦に勝利する。フリッツ王は残された国土「パラディ島」に三重の壁を築き、国民と共に逃げ込んだ。だが全員ではなく、大陸に残されたエルディア人も大勢いた。マーレはその見捨てられたエルディア人たちを根絶やしにせず、土地を与えて生かした。それがマーレ国のレベリオ収容区であり、グリシャが生まれた場所である。

 

 

グリシャはこの世の真実を知ることになった幼い頃のある1日のことを記している。

その日、グリシャと妹のフェイは腕章をつけて、飛行船を見に外へ出掛けた。外を出歩く時は、エルディア人は左腕に腕章をつけなければならない決まりがあった。収容区の端まで来て、まだ飛行船を見たいと思ったグリシャは妹を連れて無許可で収容区の外へ出てゆく。

外ではエルディア人は「悪魔の血」とか言われ、差別的な冷たい目で見られる。それでも飛行船を追いかけて見ることはできた。しかし、そこで治安当局の職員に見つかり、無許可で市内に入ったことがバレる。グリシャは妹の分まで制裁(おしおきの暴力)を受け、妹は小太りの職員に連れられて先に帰っていった。だが、その日妹は家に帰って来ず、翌日川で死体となって発見された。

 

後日あの日と同じ2人の「マーレ治安当局」職員がグリシャの家に忠告に来る。小太りの男は、妹を収容区の門の前まで送った後、忙しかったからすぐ仕事に戻ったと話した。でも明らかな嘘だった、市内に飛行船を見に行った時、2人の職員は土手に寝転んで一服していたのだから。

でもグリシャの両親は2人の職員にへりくだるばかり。すみませんでした、息子にはよく言っておきます。2人の職員が帰った後も両親は、グリシャが「あの男は嘘をついている」と言おうものなら、「黙れ!!」と一喝した。イェーガー一家は治安当局を疑い恨みを抱いている、そんな噂が流れただけで、一家全員が「楽園送り」にされてしまう。だから我々にできることは、この収容区でただ慎ましく、沈黙して生きることなのだ…。頼むから父さんと母さんをフェイと同じ目に遭わせないでくれ。

「わかった」

 

その後グリシャは父の診療所を継ぐため、医師として働いて修行中だった。18の時、ある患者からグリシャの妹はマーレ当局の男に殺されたと聞かされる。その患者は反体制地下組織「エルディア復権派」のメンバーで、グリシャが医療従事者で、かつマーレ政府に強い憎しみを抱いていることに注目し、勧誘に来たのだった。グリシャは妹の事件の真相を知った時、心に誓う。エルディアを復活させて、世界を正さなければならないと。

 

エルディア復権派には「フクロウ」と呼ばれるマーレ政府内通者がおり、その者が復権派に武器や資金、今のエルディアが知り得ない歴史文献を提供した。

ある時フクロウは復権派に一人の仲間を連れてきた。名はダイナ・フリッツ。パラディ島に逃げるのを拒んだ王家の一族の末裔だった。彼女は王家の巨人の持つ力について教えてくれた。「始祖の巨人」は他の巨人すべてを支配し操ることができる、このことを復権派は初めて知った。そして壁の中の王から「始祖の巨人」の力を取り戻すことこそが、エルディア復活のために我らがやるべきことという結論に至る。

グリシャは既に復権派のリーダー的存在となり、ダイナに見初められ、2人は翌年結婚し、男子を授かる。名はジーク。

 

時は流れそれから数年後、マーレ政府はエルディア人にお触れを出す。「マーレの戦士」を募るという。対象は5~7歳の健康な男子女子で、その中から、マーレ政府管理下にある「七つの巨人」を継承させるというのだ。選ばれた戦士の一族は「名誉マーレ人」の称号を与えられ、マーレ国での自由を保障される。

 

なぜそんなことをマーレがするかというと、表向きにはパラディ島のフリッツ王がマーレに対し宣戦布告をしてきたから、その戦いに備えるためというのが理由である。

でもフクロウが流してくれた情報によると、近年の軍事技術の目覚ましい発展で、「七つの巨人」の力によって世界の指導者の地位を支えているマーレはいずれその席を誰かに奪われる。これからは燃料を背景とする軍事力が物を言う時代に変わる。パラディ島には莫大な化石燃料が埋蔵されているらしく、他の国に奪われる前に自国の物にしておきたい。そのために、壁の中のフリッツ王を刺激せぬようパラディ島に侵入し、「始祖の巨人」を奪還、パラディ島を制圧する。これが本当の目的らしい。

 

奇しくも復権派の目的がマーレとかぶってしまった。あと数年でマーレに先を越されてしまう…。何か手はないのか…。1つ…ある。グリシャの息子ジークをマーレの戦士にさせ、彼に始祖の巨人の奪還を託すことだった。グリシャとダイナは復権派の願いを叶えるべく、ジークに教育を施す。

 

しかし…ジークは7歳の時、両親をマーレ政府に密告する。エルディア復権派は全員捕らえられ、「楽園送り」にされることとなる…。楽園送りとはパラディ島で人食い巨人に変えさせられ、永遠に島を彷徨い続けさせられることを指すのだった…。

20巻あらすじ 決着 獣、鎧、超大型を倒す

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第79話 完全試合(パーフェクトゲーム)

 シガンシナ区で超大型巨人になったベルトルトは、周りの建物を燃やし、破壊しながら内門に向かってゆっくり前進していく。リヴァイ班(104期兵)はアルミンに指揮を求める。アルミンは「一旦撤退して団長と合流、指示を仰ぐ、超大型巨人は当初の作戦通り消耗戦で対応、力尽きるまでシガンシナ区で暴れさせておく」。そう自信無さげに言う。

「イヤ待てアルミン」その作戦ではマズイことがあるとジャンは気付く。

超大型巨人が内門まで来てしまうと、門の反対側の馬めがけて燃やしたガレキを投げてくるだろう。それで馬が殺されるどころか、向こうの仲間たちが巨人と炎のガレキに挟み撃ちにされてしまう。

ということは、超大型巨人は今、リヴァイ班だけで倒さなくてはならないことになる…。アルミンは今どうすればいいかわからない。一時的にジャンに指揮を交代してもらう。

 

ジャンは考える。超大型巨人に何が有効なのかわからない。だったら、思いついたことは何でも試して、奴の弱点を探るしかない。

まず巨人化エレンに叫んでみてもらうが、超大型巨人は全く止まる気配がない。エレンたちの存在には気付いたようだが、無視して内門の方に歩いてゆく。

次に、巨人化エレンに奴の足を力ずくで止めさせる作戦。巨人化エレンは叫びながら力の限り奴の片足を押すが、奴はその片足を浮かせて一旦後ろに引き、勢いよく前に振り出した…!ドオオォォン!巨人化エレンは吹っ飛び、内門の壁上あたりに打ちつけられ、のびる。ダメだった。

 

 

 

 

 

 

 

第80話 名も無き兵士

次は雷槍を撃ち込む作戦。ジャンとコニーとサシャが奴の気を惹きつけて、ミカサが背後から撃つ。その瞬間、超大型巨人は全身から蒸気を出しはじめ、その強力な熱風でミカサの撃った雷槍は奴に当たることなく吹き飛ばされる。ジャンたちの立体機動のアンカーも外れる。ミカサは吹き飛んだ雷槍が途中で爆発した破片を受け右腕を負傷、コニーは熱風の中で息を吸って喉が焼けた。ミカサがアルミンに訊く。

「どう?何か…反撃の糸口は…」

「…何も」

超大型巨人はまっすぐ内門の方へと進んでゆく…。

ドォン!!

突然近くの建物が破壊される音がする。その方を見ると、鎧の巨人が復活して立っていた…

 

 

 

 一方ウォール・マリア領、獣の巨人サイド。2~3m級の巨人を残り数体まで倒した。その時、突然おびただしい数の砲撃が内門の方に飛んでくる。ドドドドドオオオォォォン!!

巨人も人間も見境なく撃たれて吹き飛ぶ。エルヴィンは内門の壁上から、リヴァイは建物の屋根の上から見ていた。獣の巨人が大きな岩を砕いた塊を豪速球でこちらに投げてきていた。豪速球の投石は続く。ドドドドォォォン!!リヴァイは馬の牽引部隊に、壁側まで後退するよう指示する。エルヴィンがリヴァイの元に降りてくる。リヴァイが状況を尋ねる。

「獣は兵士が前方の1ヶ所に集まるように小型の巨人を操作していたのだろう。そこで小型の巨人を相手にしていたディルク・マレーネ・クラース班は先ほどの投石で全滅したようだ。つまり内門側の残存兵力は新米調査兵士の諸君たちと、リヴァイ兵士長、そして私だ」

 

ドドドドドドド…!!

「うあああ!!」「もうダメだああああ!!」新兵たちはパニックになっている。

リヴァイは巨人化エレンにエルヴィンと何人かを乗せて敗走する策を提案する。既に状況はそういう段階にあると思わないか?

「ああ、反撃の手立てが何も無ければな…」

「…あるのか?」

「…あぁ」

「…なぜそれをすぐに言わない?…なぜクソみてぇな面して黙っている?」

「…この作戦がうまくいけば…お前は獣を仕留めることができるかもしれない。ここにいる新兵と私の命を捧げればな」

 

このままでは我々はほとんど死ぬ。ならば玉砕覚悟で勝機に懸ける戦法も止む無しなのだが…そのためにはあの若者たちに死んでくれと、一流の詐欺師のように体のいい方便を並べなくてはならない。私が先頭を走らなければ誰も続く者はいないだろう。そして私は真っ先に死ぬ。地下室に何があるのか知ることもなくな…。ハァ…

 

エルヴィンはその辺の木箱に腰掛け、うなだれる。

「俺は…このまま…地下室に行きたい…。俺が今までやってこれたのも…いつかこんな日が来ると思ってたからだ…。いつか…“答え合わせ”ができるはずだと。

…何度も…死んだ方が楽だと思った。それでも…父との夢が頭にチラつくんだ。そして今、手を伸ばせば届く場所に答えがある。…すぐそこにあるんだ。

だがリヴァイ、見えるか?俺達の仲間が…

仲間たちは俺らを見ている。捧げた心臓がどうなったか知りたいんだ。まだ戦いは終わってないからな。

…すべては…俺の頭の中の…子供じみた妄想にすぎない…のか?」

エルヴィンはリヴァイを上目づかいに見る。リヴァイはエルヴィンの前で膝をつき、エルヴィンをまっすぐ見る。

「お前はよく戦った。おかげで俺達はここまで辿り着くことができた…。俺は選ぶぞ。夢を諦めて死んでくれ。新兵たちを地獄に導け。獣の巨人は俺が仕留める」

 

エルヴィンの顔からさっきまでの暗さと険しさが消えていく。どうやらここが動かしようのない自分の死に場所らしい。エルヴィンは木箱から立ち上がる。

 

「これより最終作戦を告げる!!」

総員による騎馬突撃を目標「獣の巨人」に仕掛ける。その際、少しでも投石の命中率を下げるため、目標の投石のタイミングを見て一斉に信煙弾を放つ。そして我々が囮になる間にリヴァイが大型巨人を伝って忍び寄り、獣の巨人を討ち取る。

 

新兵の一人が気分を悪くしてゲロを吐いてしまう。別の新兵がエルヴィンに尋ねる。

「俺達は、今から…死ぬんですか?」

「そうだ」

「…どうせ死ぬなら、最後に戦って死ねということですか?」

「そうだ」

「いや…どうせ死ぬなら…どうやって死のうと、命令に背いて死のうと…意味なんか無いですよね…?」

「まったくその通りだ」

「…!」

「まったくもって無意味だ。どんなに夢や希望を持っていても、幸福な人生を送ることができたとしても、岩で体を打ち砕かれても、同じだ。人はいずれ死ぬ。

ならば人生に意味が無いのか?そもそも生まれてきたことに意味は無かったのか?死んだ仲間もそうなのか?あの兵士たちも…無意味だったのか?

 

いや違う!!あの兵士に意味を与えるのは我々だ!!あの勇敢な死者を!!哀れな死者を!!想うことができるのは!!生者である我々だ!!我々はここで死に、次の生者に意味を託す!!

 

それこそ唯一!!この残酷な世界に抗う術なのだ!!」

 

そしてエルヴィン達は突撃する。

「うおおおおおおおおおおおお…!!」

エルヴィンは叫ぶ。

「兵士よ怒れ!!兵士よ叫べ!!兵士よ!!戦え!!」

 

 

 

 

 

 

 

第81話 約束

1発目の投石が来る…!ドドドドドドッ!!

エルヴィン含め総員の約1/3がやられる。

 

「団長が…!!」

「振り返るな!!進め!!」マルロが叫ぶ。

2発目が来る…

マルロは思う――来る。これが死か。自己犠牲の精神…自分で言ってたのがこれだ。ヒッチは今頃何を…イヤ…あいつはまだ寝てるか……ああ…いいな。

…わからない。何で…俺は…今頃…ヒッチの言う通りにすれば良かったって思うんだろうか…

 

ドドドドドドッ!!

マルロ含めほとんどの兵士がやられる。

「しゃああああああ!!ゲームセットォ!!ハハ、わかるか!?投げ方を変えたんだよ。これならイチコロでしょ」

獣の巨人は得意げに前を見る。しかし…

「うおおおおおぉぉぉおおおぉぉ」

まだ3人残っている。獣の巨人めがけて突撃してくる。

「だから…そんなに叫んで何の意味があるってんだよ!!」ドドドドォォォ!!

最後の3人もやられる。

 

ドォ…。ドサ…。兵士達を哀れに思っていると、獣の巨人は近くの大型巨人が倒れているのに気が付いた。その方を見やると、立体機動装置のアンカーが飛んできて、獣の巨人に刺さる。騎馬特攻兵の最後の3人が撃った信煙弾の煙から、リヴァイが現れる。

リヴァイは目にも止まらぬ速さで獣の巨人の目を斬り、足を斬り、腕を斬り、うなじを斬る。獣の巨人はリヴァイを捕えることも、うなじを手で守ることも、硬質化で守ることも、すべてが間に合わない。リヴァイは中身のジーク戦士長を巨人の肉から斬り取り、彼の四肢を斬って、口の中に刃を刺す。

 

こいつはまだ殺せない。誰か生き残ってる奴に、ケニーからもらった巨人化の注射を打って巨人化させ、ジークを食わせ力を奪う。そうして一人だけ生き返らせることができる…

ドドドドドド!リヴァイの背後からものすごい勢いで何かが近づいてくる。リヴァイは振り向きざまに避ける。バクッ!四足歩行型の巨人がジークをくわえてダッシュで逃げてゆく。ジークは大型巨人に向かって叫ぶ。

お前ら!!あいつを殺せ!!

すると突っ立っていた大型巨人達は一斉にリヴァイの方を向き、襲いかかってくる。

「待てよ…俺はあいつに誓ったんだ…必ずお前を殺すと…俺は――誓った!」

パシュッ!立体機動のアンカーを発射し、リヴァイはたった一人で襲ってくる大型巨人の相手をする…

 

一方騎馬特攻兵の中で生き残った新兵が一人いた。

「何で…俺…生きてる…のか…?誰か…オーイ…生き残った奴はいないのか…?」

 

 

 

 

その頃シガンシナ区では、超大型巨人に歯が立たず、鎧の巨人も復活し、絶望の空気がリヴァイ班(104期兵)の中で濃くなっていた。ジャンが口を開く。

「アルミン…もうエレンを逃がすことにすべてを懸けるしか…」

「…」

「聞いてんのかよアルミン…」

「…やせてる」

「…?」

「超大型巨人が少し…細くなってる…。ハンジさんの言った通りだ!!やっぱり超大型巨人は消耗戦に弱い!!」

 

アルミンはついに反撃の作戦を思いつく。鎧の巨人を惹きつけておいてもらえれば、超大型巨人は自分とエレンで倒せる。アルミンはミカサ、ジャン、コニー、サシャに鎧の巨人を任せ、一人壁上でのびている巨人化エレンの元へゆく。

エレンを起こし、作戦を伝える…

 

 

 

 

 

 

 第82話 勇者

「何があっても僕の作戦守ってくれよ!?」

そう言ってアルミンは巨人化エレンの肩から壁上の地面に降りる。超大型巨人が少しずつアルミン達の方へ近づいている。その時、巨人化エレンは足を踏み外して下に落下する。ドォォォ…ン。巨人化エレンはうずくまって動かない。

 

ベルトルト「やっぱり…勝負はもうついていたんだ…。もう十分だ、終わりにしよう」

超大型巨人の右手がアルミンに向かってくる。ドォ!その攻撃をアルミンは避けて、立体機動で超大型巨人に接近する。しかし超大型巨人は再び全身から高熱の蒸気を発し、アルミンを近づけまいとする。しかしアルミンの立体機動のアンカーは外れない。なぜだ?よく見ると、アンカーは超大型巨人の歯に刺さっている。熱風は肉の部分からしか出ないんだ!

 

けど、とベルトルトは考える。それがわかった所で何だというんだ?君は僕の熱風でこれ以上近づけない。巨人化エレンも壁の傍でくたびれたままだ。ミカサ達はライナーの相手で手一杯だし。…本当にもう何もないのか!?…なら、今楽にしてやる。

超大型巨人は熱風の強さを一気に上げる。ボオオオオオオォォォォ!!

「ッ!!」

アルミンは吹き飛ばされないよう、装置のグリップを握っているのが精一杯だ。

 

まだだ。まだ離すな。エレンに託すんだ…僕の夢、命、すべて。僕が捨てられるものなんて…これしか無いんだ…

アルミンの手がグリップからついに離れ、丸コゲになったアルミンは吹き飛ばされる。

 

終わった…。さぁ次は、エレンと馬を…ん?超大型巨人が巨人化エレンを見ると、さっきからずっとくたびれて動かないと思っていたのは、硬質化した巨人化エレンの抜け殻だった。…え?

「殺(と)った」

超大型巨人の背後に、立体機動でエレンが飛び上がってきた。エレンはそのまま超大型巨人のうなじに移動し、ベルトルトを四肢の付け根から斬り取る。

 

陽動作戦…。最初にエレンが動けないと思わせたのも、アルミンの抵抗も、硬質化した巨人のカカシを造るための時間稼ぎ…。すべてはベルトルトの周りに敵がいなくなったと思い込ませるための計算された動きだった。

 

 

  

一方ミカサ達は、はじめ鎧の巨人がアルミン達の方へ行かないように惹きつけようとしたが、鎧の巨人は彼らを無視してアルミン達の方へまっすぐ走っていく。

注意を引けないのなら、ここで殺すしかない。ミカサは素早く判断し、走っていく鎧の巨人の膝裏に雷槍を撃ち込む。ドオォン!膝が砕け、鎧の巨人はその場に倒れる。

「オイ!!」

ミカサの単独行動にジャンは思わず声を上げる。

「ここでエレンとアルミンを守る」

「…あぁ…わかった!!」

4人は鎧の巨人を囲うように散らばる。

 

雷槍は残り3本…。これで鎧を仕留める方法は、1つしかない。奴が動けない内に勝負に出る!

「ライナアアアアアアアア!!」

ジャンが囮に、鎧の巨人の右斜め後ろから斬りかかる。それとほぼ同時に、鎧の巨人の左右からサシャとコニーがそれぞれ一本ずつ雷槍を構えて接近する。

鎧の巨人はサシャとジャンがいる右方の建物の家屋を右手で切り裂く。サシャとジャンは飛んでくる無数の鋭い木片を浴びる。サシャは雷槍を撃つも、鎧の巨人には当てられなかった。コニーは鎧の巨人の顎左側に雷槍を命中させる。ドォン!鎧の巨人の左顎が外れる。

…一本、外した。両顎を外して開いた口に雷槍を撃つつもりだったのだが…。ミカサは雷槍を構えたまま一瞬止まる。その時!

 

「よくやった!!」

ハンジが現れ、鎧の巨人の顎右側に雷槍を撃つ。ドオォォン!

ガコッ!鎧の巨人の口が開く。「今だ!!ミカサ!!」

鎧の巨人は右手で(左手はさっきから地面に手をついて、姿勢を保つために使っている)ミカサを捕えようとする。ミカサはそれをひらりとかわし、鎧の巨人の顎まで飛び込んで、口の中に雷槍をぶっ放す。

「ライナー、出て」

 

ドオォォォォ…ン!!

鎧の巨人のうなじからライナーが吹っ飛んで出てくる。

19巻あらすじ 人類VS巨人@ウォール・マリア シガンシナ区

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第75話 二つの戦局

エルヴィン団長は敵の巨人たちを観察しつつ、どう出てくるかを窺っている。獣の巨人のすぐ側に四足歩行型の巨人がおり、何やら背中に荷物を載せた鞍がある。先ほど一斉に巨人化したものではなさそうだ。だとしたらそいつが敵の斥候で、我々の接近にいち早く気付き、ライナーらに伝えた…とするなら、知性を持っている巨人と見られる。

 

鎧の巨人が壁を上ってくる。そして獣の巨人が雄叫びを上げると、2~3m級の巨人たちが一斉に内門の方に走ってくる。

 

エルヴィンは敵のしようとしていることを読む。敵の主目的はエレンの奪取である。そのためにまず、我々が逃げられないようにしたいようだ。依然巨人の領域であるウォール・マリア領から我々が馬無しで帰還する術はない。馬を殺せば、あとは退路を閉鎖するだけで我々は逃げられなくなる。

一週間でも一ヶ月でも動けるものがいなくなるまでただ待てばいい。そうすれば敵は戦わずして虫の息となったエレンを奪い去ることができる。今、敵の大型巨人が隊列を組んで動かないのは、それが檻の役目を果たしているに違いない。

今やるべきことは、鎧の巨人と超大型巨人に馬を殺されるのを防ぐことだ。エルヴィンは指示を出す。

 

「ディルク班並びにマレーネ班は内門のクラース班と共に馬を死守せよ!!リヴァイ班並びにハンジ班は鎧の巨人を仕留めよ!!各班は指揮の下『雷槍』を使用し、何としてでも目的を果たせ!!今この時!!この一戦に!!人類存続の全てがかかっている!!今一度人類に…心臓を捧げよ!!」

 

「ハッ!!」

 

エルヴィンは全体指示と別に、リヴァイに獣の巨人を仕留めること、アルミンに鎧の巨人戦の現場指揮をハンジとやることを指示する。指示を出し終わった後、一人壁上に立ちながら、エルヴィンは思う。

 

今までこうして何度も仲間を鼓舞し、自分を鼓舞し、数え切れない犠牲者を出してきた。調査兵になって気付いたが、他の仲間は人類のためにすべてを捧げているのに、自分は、自分だけは夢を見ている。今多くの仲間の屍の上に立っている。その重責は生々しく感じるが、それでも脳裏にチラつくのは地下室のことだ。世界の真相を知るまでは、自分は死ねない…

 

 

 

鎧の巨人が壁上まで上ってきた。目線の先には馬。少し前、リヴァイにうなじをザックリ斬られた時のことをライナーは思い出す。危なかった…。あの時…意識を全身に移すのが一瞬でも遅れていれば、あのまま即死だった。

とその時、鎧の巨人の背後で閃光が。シガンシナ区でエレンが巨人化したのだ。巨人化エレンは南の壁に向かって走り出す。まさか、南から壁を越えて逃げる気か!?いやでもそれなら立体機動で東か西の壁を伝ってから巨人化するだろう…。

ライナーはエレンの行動を不可解に思うが、自分の注意を馬からエレンに向けるための、エルヴィンの考えだと気付く。しかし気付いた所で、逃げるのを放っておくわけにはいかない。エレンは馬がなくても巨人の力でトロスト区まで帰ることができるからだ。鎧の巨人はせっかく上った壁を降り、シガンシナ区の巨人化エレンを追う。

 

鎧の巨人が壁から降りてきたのがわかると、巨人化エレンは向き直り、戦闘態勢に入る。巨人化エレンは拳にメリケンサックのような硬質化物質をつくる。以前トロスト区で鎧の巨人と戦った時、エレンは勝っていた。1対1の格闘戦ならオレは勝てる…

 

 

 

 

 

 

第76話 雷槍

その予想通り、巨人化エレンは鎧の巨人に確実にダメージを与えられている。硬質化した拳が功を奏し、鎧の巨人の硬質化のボディをカンタンに砕ける。取っ組み合いになり、巨人化エレンの関節技が決まるが、鎧の巨人はそこから抜け出し、巨人化エレンと距離を取って少しの間静止する。どうする…オレ一人ではエレンをかじり取るまでいけない。もはやこの手を使うしか―― 

 

その時、ハンジ班とリヴァイ班兵士が鎧の巨人に向かって立体機動で急接近してきた。鎧の巨人は「兵士に何ができる。俺の硬質化ボディには刃は効かない」と無防備でいたが、目の前のハンジとミカサの射出器から槍状のものが発射され、鎧の巨人の両目に突き刺さる。槍には手りゅう弾のようなピンがついており、ハンジとミカサがそれぞれ引っこ抜くと、槍は爆発した。

ドドォッ!!

鎧の巨人は目をつぶされ、しゃがんで前かがみの格好で動きが止まる。

 

その槍は、ハンジが技術班に頼んで作ってもらった、対鎧の巨人用武器だった。爆発する時に雷が落ちたような音がするから「雷槍(らいそう)」という名がついた。威力は十分あるが、果して鎧の巨人にも効くのか、そこが賭けだった。

 

今、鎧の巨人のうなじは無防備だ。残りの兵士が一斉に鎧の巨人のうなじに雷槍を撃ち込む。ドドドドドドォッ…!!爆発跡を見ると、うなじの鎧が剥がれかけている…!やった!雷槍が効いた!

 

ハンジ「もう一度だ!!雷槍を撃ち込んで止めを刺せ!!」

 

104期兵は一瞬ためらう(ミカサは違う)。だがジャンが発破をかける。

「お前ら…こうなる覚悟は済ませたハズだろ!?やるぞ!!」サシャとコニーが悲壮な顔でジャンを見る。

「うおおおおおおおぉぉ!!」

 

ドスドスドスドス…!!鎧の巨人のうなじに雷槍が刺さる。鎧の巨人の中のライナーが一回目の雷槍爆発による気絶から目を覚ます。

「―ハッ…待っ…待って――」

 

ドドドドドォン…!!雷槍が爆発し、鎧の巨人のうなじから頭が吹っ飛んだライナーの体が露出する。

 

 

 

 

 

 

 

 第77話 彼らが見た世界

「やったぞ!!頭を吹っ飛ばした!!鎧の巨人を仕留めたぞ!!」「うぅ……う………」

 

ハンジ班の兵たちは歓喜の声を上げ、104期兵は嗚咽を漏らしている。張りつめていた緊張がほぐれていく中、ミカサは鎧の巨人がピクッと動くのを見る。次の瞬間、

 

「オオオオォォオオオォオオオォォオオオオ…」

 

鎧の巨人が叫びを上げた。女型の巨人が捕えられた時上げた叫びと似たやつだ。敵側の何かの合図らしく、獣の巨人は四足歩行型巨人の背中の鞍から樽を一つ取り出し、シガンシナ区の中に向かって投げる。

 

ハンジはライナーの体ごと吹き飛ばすよう、雷槍をもう一度打ち込む指示をしていた。鎧の巨人の叫びで胸騒ぎがしていたアルミンは空を見上げ、獣の巨人が投げた樽がこちらに向かっているのを見つけ、中身はベルトルトだと直感する。

 

「ダメです!!ライナーから離れて下さい!!上です!!上から超大型が降ってきます!!ここは丸ごと吹き飛びます!!」

「クソッ!!全員鎧の巨人から離れろ!!超大型巨人がここに落ちてくるぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

第78話 光臨

ハンジ班とリヴァイ班の兵は一斉に離れる。しかしまだ超大型巨人の爆発を避けられる距離じゃない。もっと離れないと。でももう樽は建物のすぐ上まで落ちてきている。どうする…!

 

バカッ!!(樽のフタが開く音)「ライナアアアアァァ!!」

 

樽が開くと同時にベルトルトが飛び出してきて、巨人化せずライナーの元に着地する。ベルトルトはライナーの胸に手を当てる。…ドクン、ドクン…。生きている。どうやら全身の神経網に意識を移して死を免れたらしい。

 

ベルトルトがライナーの状態に気付き、攻撃を中断したおかげで、ハンジ班とリヴァイ班の兵と巨人化エレンは遠くまで離れることができ、助かった。ベルトルトがこちらに近づいてくる。ハンジが指示を出す。リヴァイ班(104期兵)はエレンを守れ。その他の者は全員で目標2体を仕留める。鎧に止めを刺し、超大型巨人は力を使わせて消耗させる。

 

せめてライナーに止めを刺しに行く間の時間稼ぎになればと、アルミンは独断でベルトルトと話し合いの交渉を試みる。が、ベルトルトは以前とは別人のように意志が強く、アルミンが揺さぶりをかけても全く動じない。そこへミカサが背後から奇襲をかけるが、ベルトルトは隙を見せず応じてくる。だがミカサを倒すまではいかないので、その場から逃げる。

 

一方鎧に止めを刺しに行った兵士たちだったが、鎧の巨人が体を仰向けにしている…!これじゃ止めがさせない…

他の兵はベルトルトを追いかける。ライナーを助けに行くと踏んで、距離をつめて追う。するとベルトルトは急に立体機動で上空に飛び上がる。まさか…ライナーはすぐ近くにいるのに…

 

そのまさかだった。ベルトルトの体が光り、それを中心にすさまじく広範囲の爆発が起こる。周りの建物が吹き飛ぶほどの爆風、上空には大きなきのこ雲。超大型巨人が現れる。巨人化エレンとリヴァイ班(104期兵)はだいぶ離れていたのでケガなく無事だった。鎧の巨人も無事なようだ。ハンジ班はベルトルトの近くにいたが…?

18巻あらすじ ウォール・マリア奪還作戦、開始

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第71話 傍観者

 エレン、リヴァイ、ハンジ、104期生(ミカサ、アルミン、ジャン、サシャ)一行は、訓練兵団教官キース・シャーディスの元を訪れる。彼からグリシャについて知っている話を聞く。

 

キースとグリシャが出会ったのは今から20年前、壁の外でだった。キースは調査兵団の一員で、壁外調査の帰路、ウォール・マリア シガンシナ区壁門前で丸腰状態の男を見つけた。

無許可で巨人領域に侵入したという罪で壁内の牢に拘束したが、特に被害者がいるわけでもなかったので、上への報告は無しで釈放となった。男は壁の中の歴史とか成り立ちとか、地域の名前とか、この壁の中の世界のことを何も知らなかった。知っていたのは、出生記録にもない彼自身の名前、グリシャ・イェーガーと、職業が医者だということだけ。

グリシャには壁の中に頼りの者などいなかったので、シガンシナ区で医者をしながら生活することになった。

 

ある時街で伝染病が流行った時、グリシャはキースの行きつけの酒場のウェイトレス、カルラとその両親の病を治したことで、カルラとの付き合いが始まり、後に結婚する。二人の間にはエレンが生まれる。

 

キースは調査兵団の団長になる。でもいつも成果は出せず、仲間を減らすばかりだった。キースは一度カルラから、「この子は別に特別にならなくてもいい。生まれてきてくれただけで偉大」と息子エレンのことについて話される。

 

時が経ってエレンが訓練兵団に入ってきた時、最初のバランス訓練で失敗するように、キースは装備の部品を一部欠けさしておいた。エレンに、「父グリシャの願い通り生きるのではなく、本当の自分に従って生きろ」ということを伝えたかったからだ。しかしその試みも、エレンの兵士になりたい思いを折ることはできなかったが…

 

 

 

 

 

 

第72話 奪還作戦の夜 

キースの話を聞いた後、エルヴィン、ハンジ、リヴァイなどの調査兵団幹部は会議をしていた。グリシャは壁の外の人間である可能性が高い。その彼が、調査兵団になりたいと言った息子に見せようとした地下室。エルヴィンはそこに何があるのか知りたくてたまらない。自分の父親の仮説を証明するものがあるに違いない。

会議の後、エルヴィンはリヴァイから、今回の作戦は前線に来るなと言われる。エルヴィンが調査兵団を指揮している、そのことが敵にとって今一番の脅威だからだ。前線に来て死なれては困る。リヴァイの判断は妥当なものだったが、エルヴィンはきかなかった。この世の真実を知ることが彼のやりたいことだからだ。

 

作戦前夜、エレンとミカサとアルミンは3人で話していた。アルミンは、ガキの頃と変わらず、海や炎の水、氷の大地、砂の雪原を壁の外で見ることを夢見ている。彼はそれを楽しそうに話す。そんな3人の会話を、リヴァイは物陰に隠れて聞いていた。エルヴィンとアルミンが重なって見えたのだろう。2人とも同じように夢を見ている。ケニーの言い方をすれば、夢に酔っ払っている。夢の奴隷だ。

 

 

 

 

 

 

第73話 はじまりの街 

翌日、日没と同時にウォール・マリア奪還作戦開始。調査兵団はウォール・ローゼ南 トロスト区のリーブス商会や住民らから歓迎されながら出発する。

そして日が昇る頃、シガンシナ区に到着。調査兵団はまず外門をふさぐ作業に取りかかる。総員100名がフードを被った状態で一斉に外門を目指す。これは敵にエレンがどれかわからなくさせるためだ。エレンは無事外門に辿り着き、巨人化、硬質化して巨人エレンの塊で外門の穴をふさぐ。

 

 

 

 

 

 

 

第74話 作戦成功条件

次は内門の穴だ。エレンたちは再びフードを被り内門まで移動する。しかしその移動中、エルヴィン団長から作戦中断の合図が信煙弾で撃たれる。総員壁の上に散らばって待機。

 

合図のある少し前、アルミンは壁の上に焚き火の後を見つけた。その周辺を調べると、野営用具が落ちており、鉄製の冷めきったポットと、ポットの中身を注いだ跡のあるカップが3つあった。敵は少なくとも3人はおり、何らかの方法で事前に調査兵団がこの日来ることを知っていたらしい。アルミンは、エルヴィンから敵の隠れ場所を探すよう指示を受ける。区外区内の内門周辺の建物を探すが、全然見つからない。

 

まずい…。もうエレンたちが内門をふさぎに来る…敵がどこにいるかもわからないのに。敵はいつだって僕らの予想外から攻めてくる。僕らがいつも不利なのは…いつだって僕らが巨人を知らないからだ。いつも…。その時、アルミンはストヘス区のアニ捕獲作戦で壁の中に巨人がいたことを思い出す。まさか…

 

アルミンは信煙弾を撃ち、壁上に敵捜索中の兵士を集める。

「アルレルト、見つけたのか!?敵はどこだ!?」

「まだです!!――全員で壁を調べて下さい!!」

「…壁はもう調べたと言ったろ!!どこにも隠れられる場所は――」

「壁の中です!!」

皆一瞬あっけにとられる。「壁の中!?」

「はい!きっと人が長い間入っていられる空間がどこかにあるはずです」

「なぜそれがわかる?」

「…勘です」

「お前今がどういう時だかわかっているのか!?そんなことにかける時間は――」

「し しかし敵は!!いつだってありえない巨人の力を使って僕達を追い込んできました。誰でも思いつく常識の範疇に留まっていては……到底敵を上回ることはできないのです!!」

 

エルヴィン団長はそれを聞いて、作戦中止の信煙弾を撃つ。

「時に厳格に 時に柔軟に。兵士の原理原則に則り最善を尽くせ。指揮系統を遵守せよ。我々は勝利するためにここに来たのだ」

アルミンはやはりこれしかないと踏む。

「再び二手に分かれ壁面の調査を!!扉の上部から入念に…捜索開始!!」

指示を受けた兵士たちは、自分達よりも若く経験の浅いアルミンの、突拍子もない発想にやはり納得がいかない。一瞬沈黙が流れる。しかし団長はアルミンの指示に従えという。…やるしかない。

「了解!!」

 

カンカンカンカン…兵士たちがシガンシナ区内側、内門付近の壁を上から下に向かって、刃で叩く音が響く。すると、穴が開いた所の上あたりの壁に、コンコンと音の違う部分が見つかる。見つけた兵士は信煙弾で知らせる。

その直後、壁が内部から開き、兵士が刃を胸に刺される。壁の中からライナーが出てくる。すぐ近くにいたアルミンは刃を構え、ライナーに応じる。とその時、リヴァイが壁上から急降下してきて、ライナーのうなじと胸に深く刃を突き刺す。そして蹴飛ばして地面に叩きつける。

「クソッ!!これも巨人の力か!?あと一歩…命を絶てなかった」

ライナーの体が光り、巨人化する。

 

それとほぼ同時に、ウォール・マリア内地、内門から離れた平地にも無数の光が。突如獣の巨人と、巨人の大群が現れる。獣の巨人は大きな岩を内門の穴めがけて投げる。岩は穴のあたりの地面に落下し砕ける。内門に岩のガレキの山ができ、馬が通れないようになった。敵はここでなんとしてもエレンを奪う気だ…

17巻あらすじ エレンとヒストリア奪還成功 ヒストリアは女王になる

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第67話 オルブド区外壁

エレンはミカサとジャンにほじくり出されて、自分の巨人から救出された。目が覚めてみると、硬質化した巨人エレンと、天井の崩落を防ぐための何本もの柱が立っていた。どうやらエレンは硬質化に成功し、皆を助けたらしい。これでウォール・マリアもふさげる。

 

地上へ出てみると、超大型巨人の倍くらいある巨人、ロッド・レイスが四つん這いになって、近くの木々を燃やしながら移動している。エレンに「叫び(座標)」の力を試させてみるが、発動しない。

巨人はウォール・シーナ北城壁都市オルブド区の方角へ一直線に進んでいる。奴はより大勢の人間が密集する方へと吸い寄せられる奇行種と見られる。選択肢は、エレンを食わせて人間に戻すか、殺すかの2択。

しかしエレンはせっかく硬質化を修得し、壁をふさげる目処が立った。それに父グリシャが苦労してレイス家から奪った力は、何か意味があるはず。シガンシナ区エレンの家の地下室に辿り着くこと、そこに何が隠されているのか確認するまでは、エレンは失えない。ヒストリアには悪いが、ロッド・レイスの巨人は殺す方針が固まる。

リヴァイ、ハンジ一行はエルヴィン団長率いる調査兵団部隊と合流し、オルブド区へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

第68話 壁の王 

オルブド区の駐屯兵団と調査兵団で協力して巨人を殺すことになった。区内の住民は避難させずに作戦を実行する。なぜなら人々が避難する方に巨人が吸い寄せられてしまい、オルブド区の外壁で迎え撃つことができなくなる恐れがあるからだ。

 

そしていよいよ巨人が城壁に近づいてきた。ヒストリアは安全な場所で待機命令を受けていたが、何か考えがあるらしく兵服と装備をそろえて前線に来た。かき集めてきた砲台を壁上から地上から、巨人のうなじめがけて一斉に発射する。しかし効き目は無かった。

そこで、エルヴィンが考えた作戦に移る。何やら荷車に立体機動装置の射出器を取りつけたものに火薬を積んだり、たくさんの火薬の樽を大きな網でひとまとめに包んだりしている。

そうこうしている間に巨人は城壁の真下まで来た。両手を壁の上まで伸ばして、巨人は立ち上がる。オルブド区の住民たちは巨人を見てパニックになり、我先に逃げようと走り出す。壁上の駐屯兵団を退避させ、調査兵団の作戦が始まる。

 

エレンが巨人化して、少し離れて待機している。エルヴィンの信煙弾が撃たれると同時に、巨人が手をついている両外側から荷車の射出器を発射。巨人の手に刺さると、ワイヤーを巻き取りながら荷台は巨人の手めがけて直進する。荷車が巨人の手にぶつかり、載っていた火薬が爆発、巨人は体勢を崩し、アゴが壁に引っかかる形になる。

次にエルヴィンの指示で、巨人化エレンが大きな網に包んだ大量の火薬を担いで巨人に近づく。そしてその包みを巨人の口に勢いよく放り込む。巨人の体内で火薬は爆発し、うなじ辺りの肉片が四方八方に吹き飛ぶ。

そのどれかが奴の本体なので、総員立体機動で肉片を捉えて切りにかかる。一体どれが本体だ!?早くしないとまた再生して高熱の盾が復活してしまう。その時、ヒストリアが肉片を切ると、他の肉片が崩れて消えだした。ヒストリアはそのまま落下して何かの荷台の上に落ちた。駐屯兵団の兵士や街の人々が心配して集まってくる。

 

「君があの巨人にとどめを刺したのか!?この街は救われたのか!?」

「…私は、ヒストリア・レイス。この壁の真の王です」

 

ヒストリアは自分が巨人にとどめを刺したことにしてほしいとエルヴィンに相談していた。そうすればこの壁の求心力となって民衆をまとめることができると。しかしまさか本当に自分で仕留めてしまうとは…

 

 

 

 

 

 

 

第69話 友人 

王都でヒストリアの戴冠式の準備が進められる中、リヴァイはレイス卿の礼拝堂周辺でケニーを探していた。ケニーは林の中で木にもたれかかり、ひどいやけどと出血で虫の息であった。一人昔のことを思い出していた…

 

ケニーの妹クシェルは地下街の娼館で働いていて、ある客との間にできた子どもを産む。それがリヴァイだった。クシェルはその後病気をもらって衰弱死する。クシェルの家で死にかけていたリヴァイを拾ったのがケニー。

ケニーはリヴァイに地下街での生き方を教えた。力がなければならない。いや、力さえあればいい。リヴァイが子どもながらも一人で生きていけるようになった時、ケニーはリヴァイの元を去った。

 

そしてある日、ケニーは王政の議会関係者から情報を吐かせ、レイス家 巨人の力継承者、ウーリ(ロッド・レイスの弟)を襲うが、巨人の手に握りつぶされそうになり、初めて自分より強い奴の力に屈服する。

ウーリの意志でケニーは殺されずに済み、憲兵団に入ることになる。ケニーはウーリと親交を深める。

月日は流れウーリは次の継承者に食われる時となった。次の継承者フリーダもウーリと同じような目をしていて、いつも愛だの平和だのとのんきなことを言っている。なんでそんな暇なことを言っていられるのか、ケニーには全く分からなかった。神にも等しい力を手に入れてしまうと誰でも慈悲深くなってしまうのだろうか。クズみたいな俺でも?それを確かめたかった…

 

 

 

リヴァイがケニーを見つける。ケニーの部下は全員地下崩落時に潰れて死んだらしい。ふとケニーが喋りだす。

「今なら奴のやったこと、わかる…気がする。俺が見てきた奴ら…みんなそうだった…酒だったり…女だったり…神様だったりもする。一族…王様…夢…子供…力…みんな何かに酔っ払ってねぇとやってらんなかったんだな…みんな…何かの奴隷だった…あいつでさえも…」

そして最後にリヴァイにある物を託す。ケニーがロッド・レイスからくすねておいた巨人化注射セットだった。間もなくケニーは息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

第70話 いつか見た夢 

王都。民衆が集まった中、ヒストリアの戴冠式が行われていた。ヒストリアの考えた通り、民衆は歓迎モードである。

それから2ヶ月。ヒストリアはレイス卿領地の牧場で、孤児院を開き院長として忙しくしていた。地下街の孤児を集めてきて面倒を見る。一人で困っている人がいたらどこにいたって助けに行く。彼女のやりたかったことだ。

 

新体制になると、旧体制の権力者たちは爵位剥奪や地方の収容所送りなど、粛清を受けた。また、これまで中央憲兵によって抹消されてきたとされる技術革新の芽は、実は一部の中央憲兵により保持されていた。それで兵器の改良がなされたり、他にもいろいろと便利な物が開発された。

ウォール・マリア奪還作戦の準備も着々と進んでおり、あと約1ヶ月で全ての準備が整うところまで来た。

 

エレンはレイス卿の洞窟で記憶が蘇った時、父グリシャがフリーダを食ってからエレンに食われるまでに会っていた人物を思い出していた。それが誰だったのかわからなかったが、ジャンの冗談で思い出す。キース・シャーディス教官だ。訓練兵時代お世話になった人。

 

 

 

 

一方ウォール・マリア、シガンシナ区では獣の巨人と鎧の巨人が戦っていた。ライナー(鎧の巨人)が勝てば、エレンを奪う前にアニの救出をするという賭けの勝負をしていたらしい。しかしライナーは負けた。ベルトルトが心配そうに駆け寄る。

3人は、エレンたちが来るのを待ち受ける…